Dec 21, 2022 interview

中江功監督が語る 吉岡秀隆と共にドラマから映画まで繋げた強い想い『Dr.コトー診療所』

A A
SHARE

「それでも人は生きていく」をそれぞれに受け止めてもらえたら

池ノ辺 ドラマでも映画でも、監督のものづくりのこだわりは何かありますか。

中江 役者に対してはありますね。もちろん皆さんいろんな役を演じるわけですけど、この作品のこの役はこの人しかできなかったと、そういうものを見せてほしいと思っています。ですからそれを引き出すために、いろいろ話をしたり、リラックスできるような環境を整える、そういうところはこちらの仕事だと思っています。特に今回は映画なので、お金を払って観にいってよかったと思ってもらえなければいけないと、そこはすごく思いました。

池ノ辺 吉岡さんともいろいろ語り合ったんですか。

中江 話しましたけど、実はあの人はあまり主張しないんですよ。ただ、ここはこういう感じになるといいな、そうしたいというのは話してくれました。

正直なところ、彼はテレビドラマから続くような映画はやらないんじゃないかと思っていたんです。だから引き受けてくれた時にちょっと驚いたんですが、「監督がやるんでしょ。役者は監督がやれって言ったらそれ断れないですよ」と言ってくれて。それはすごく嬉しかったですね。

池ノ辺 吉岡さんは、それだけDr.コトーへの想いが強かったということでしょうか。

中江 僕らお互いにそうだと思います。彼は、僕の強い想いについてきただけだと言ってますが、彼の方が強いと、僕は思ってます(笑)。

池ノ辺 コロナ禍を経ての撮影だったと思いますが、今だからこそ観てほしい映画だとすごく思いました。

中江 そう思ってもらえると嬉しいですね。この映画の見どころとかテーマとか、聞かれるたびに「それでも人は生きていくんだということ」と言ってるんですが、それ以上言いようがないなと思っていて。

「こんな世の中で、生きていくのは大変だけれど、でもそれが僕たちの使命だよね」それしか言えないです。もちろんどう感じるかは、観てくれる方にお任せなんですが、ちょっとでも観てよかったなと思ってもらえたら嬉しいですね。

池ノ辺 お客さんに観ていただくということも含めて、ものを作って表現するというのはそういうところですよね。
では最後の質問です。監督にとって映画とはなんですか。

中江 映画ということに関していうと、僕はテレビが長かったので、一つの憧れの世界ではあります。そもそも作ったものを、お客さんがそれを観るために足を運んでくれて共感してくれて、というのはすごいことだと思うんです。そんなことが自分にできるとは思っていなかったので尚更そう思います。

もちろん作るのは大変ですが、劇場でお客さんたちがその場で時間を共有して、物語を楽しむことができるって、すごく貴重で、不思議な空間、遊園地みたいなものです。だからこそぜひ劇場に行って観てほしい。今はいろんなメディアがあって、それこそスマホでも観られますが、やっぱり劇場に足を運んでほしいですし、観終わった後にいろんなことを感じてほしいと思っています。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理

プロフィール
中江 功(なかえ いさむ)

監督

1963年6月13日生まれ/宮城県出身

【主な監督・演出作品】
『冷静と情熱のあいだ』(01) 監督
「Dr.コトー診療所」シリーズ(03・04・06/フジテレビ) 演出
『シュガー&スパイス 風味絶佳』(06) 監督
『ロック ~わんこの島~』(11) 監督
「教場」シリーズ(20・21/フジテレビ) 演出・プロデュース

作品情報
映画『Dr.コトー診療所』

日本の西の端にぽつんと在る美しい島・志木那島。本土からフェリーで6時間かかるこの絶海の孤島に、19年前東京からやってきた五島健助=コトー。以来、島に“たったひとりの医師”として、島民すべての命を背負ってきた。長い年月をかけ、島民はコトーに、コトーは島民に信頼をよせ、今や彼は、島にとってかけがいのない存在であり、家族となった。数年前、長年コトーを支えてきた看護師の星野彩佳と結婚し、彩佳は現在妊娠7ヶ月。もうすぐ、コトーは父親になる。2人と共に暮らす彩佳の両親・正一と昌代、漁師の原剛利、ご意見番の重雄や漁師仲間、スナックを営む茉莉子、診療所を手伝う和田らが、今日もそこで静かに暮らしている。2022年現在、日本の多くの地方がそうであるように、志木那島もまた過疎高齢化が進んでいる。現実を前にしながらも、コトーの居る診療所があればまあ大丈夫だろうと、皆心のどこかで思っていた。16年間経った今も蒼く広がる海や水平線、波の音、夜空の星の輝きは変わらないが、島は少しずつ変化している。そんな診療所の穏やかな日常にもある変化が忍び寄っていることを、誰もまだ気づいてはいない‥‥。

監督:中江功

原作:山田貴敏「Dr.コトー診療所」(小学館)

出演:吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、髙橋海人(King & Prince)、生田絵梨花、蒼井優、神木隆之介、伊藤歩、堺雅人、大森南朋、朝加真由美、富岡涼、泉谷しげる、筧利夫、小林薫

配給:東宝

©山田貴敏
©2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会

公開中

公式サイト coto-movie.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
映画が大好きな業界の人たちと語り合う「映画は愛よ!!」記事一覧はこちら