Aug 26, 2022 interview

松尾諭が語る 半分は運だけど、半分は必然の人生を描いた物語『拾われた男』

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いつも何かを拾おうとしていた

池ノ辺 それにしても、飛行機のチケットをたまたま拾って、それが芸能事務所の社長のもので、そこから俳優人生をスタートさせるなんて、とても実話だとは思えないですよ。それこそ「何で?」って思っちゃう。

松尾 僕にとって、そこは「何で?」じゃないんですよ。

池ノ辺 どうしてですか?

松尾 何で僕がチケットを拾ったかといえば、いつも何かを拾おうとして下ばっかり見てるから。よく「チケット拾ったってすごいよね」って言われるんですけど、落ちてるものを僕は大体拾うんです(笑)。

池ノ辺 チケットを拾ったんじゃなくて、拾っているもののなかにチケットがあった(笑)。

松尾 ちょっとでもお金になるものがないかって、いつも下を向いてるから(笑)。

池ノ辺 今でも下を向いてるんですか?

松尾 見てますね。家族と歩いているときでも、粗大ごみ置き場の前を通ったときも思いますもん。「これ使えるな」とか(笑)。でも家族の手前‥‥。

池ノ辺 持って帰ったら絶対怒られますよ(笑)。子どもの頃から、落ちてるものを見つける子だったんですか?

松尾 小さい頃は、『週刊少年ジャンプ』なんかも買ったらダメな家だったから、落ちてないか探してました。いっぱい落ちてたんですよ、尼崎って。見つけたら、家の近くのガレージに持っていって隠して。その反動で、すごく漫画を読むようになったんですけど。

「松戸諭」を演じる仲野太賀と松尾諭

池ノ辺 ドラマで松尾さんである松“戸”諭役を演じているのは、仲野太賀さんですね。自分自身を別の俳優さんが演じるなんて、めったにない体験では?

松尾 もう本当に太賀くんが演ってくれて良かったなと思います。僕自身の役とかは抜きにして、ドラマの主人公として、こんな面白い人はいないってぐらい面白い設定なので。

池ノ辺 事前に太賀さんへ、“松戸諭”役についてレクチャーしたりしたんですか?

松尾 いやいや、そんな。もう自由にやってくださいと。

池ノ辺 太賀さんは、松尾さんをよく観察して演じているんだろうなと思いました。

松尾 研究したりしてたのかな?

池ノ辺 すごく松尾さんの雰囲気を掴んで演じていると思いましたよ。

松尾 体重を増やしたりもしていたから、体重を増やすと僕みたいになるのかもしれません。今度は僕の方が太賀くんの真似しちゃうんじゃないかと思ってドキドキします(笑)。

池ノ辺 それで言えば、松尾さん自身もご本人役の“松尾諭”として出てくるじゃないですか。