Feb 17, 2022 interview

[ 映画は愛よ ! 特別編 ] マイケル・ドウェック×グレゴリー・カーショウ両監督が語る おとぎ話の世界のような『白いトリュフの宿る森』がどのように生み出されたのか

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トリュフ・ハンターとの信頼で生まれた奇跡の撮影

池ノ辺 どのシーンもすごく美しかったのですが、考えてみると、これだけの映像を撮るには普通に撮るだけでは無理ですよね。すごく時間をかけて撮影しなきゃいけないし、謎めいたトリュフ・ハンターのおじいさんたちとの関係性を深めないと撮ることが出来ないんじゃないかと思える映像ばかりでした。

グレゴリー 仰るとおり。この世界を捉えるためには、とても長い時間がかかっています。僕たちの映画作りというのは、カメラを回す前から始まっているんです。この映画の場合、白トリュフに関わっている人々を知るところから始まっています。

池ノ辺 白トリュフを使用するレストランの人とか?

グレゴリー そうです。レストランでトリュフが出てきたので、仕入れ先が絶対あるはずなので、トリュフ・ハンターを紹介してもらえないかと頼んだら、「会ったことがない」と言われたんです。夜に小さな木の箱を店の外に出して、中にお金を入れておくと、朝には魔法のようにトリュフが入っていると言うんです(笑)。

池ノ辺 ほんとに魔法のようですね(笑)。

グレゴリー その後、いろいろあって、「この人はトリュフ・ハンターかな?」と僕たちが思う方にやっと出会ったけれど、ご本人は決して自分のことをハンターだとは言わないんです。

池ノ辺 どうやってその人たちの信頼を勝ち得たんですか?

グレゴリー 僕たちは3週間滞在して、1週間帰国して、またイタリアに行くということを繰り返しました。そのときにお土産を持っていくんです。イタリアで僕たちが泊まっていたアパートの下にはお肉屋さんがあって、道の反対側にはチーズ屋さんがあったので、朝、肉とチーズを買って持っていくんです。そうすると、お返しに牡蠣とアプリコットをくれたりする。

池ノ辺 食べ物を通じて交流していたんですね。

グレゴリー そういうことを繰り返していると、いろんな話をしてくれるようになりました。もちろん、そのときはまだカメラを出していませんよ。ワインを片手に家族の写真を出してきて話をしてくれると、僕たちもお互いの家族の話をしたり、一緒にランチしたりということを繰り返していくことで、互いを知るようになり、結果的には家族のような関係性を持つことが出来るようになりました。そこでやっと僕たちはカメラを出して、撮影を始めたんです。

池ノ辺 カメラを出しても構わない関係になるまでの時間が、この映画にとって、とても重要だったんですね。

グレゴリー 撮影を始めたときは、本当に家族の一員のような空気感になっていましたし、彼らはカメラの存在も、撮影されていることも感じなかったんだと思います。