Oct 17, 2020 interview

ニコール・キッドマンが迫真の名演、ネオ・ノワールの衝撃作『ストレイ・ドッグ』を鬼才カリン・クサマ監督がオンライン インタビューで語る

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ニコール・キッドマンではなく、エリン・ベルを監督する

池ノ辺 愛することをうまく表現できない女性を演じたニコールは本当に素晴らしかったのですが、どう演出したんですか?

カリン ニコールはメソッド演技法で演じるので、常に役に入り込んだままです。だからセットにいる時も、帰ってからもエリン・ベルというキャラクターから離れなかった。例えば、ホテルに帰っても彼女はいつも革ジャンを 着ていたわ。普通はその日の撮影が終われば着ないでしょう? だから、早い段階で私はニコールを演出するのではなく、彼女が演じたエリン・ベルというキャラクターを監督しなければならないと気がついたの。

池ノ辺 それは俳優さんにとっては、大きな負担になりますね?

カリン 彼女は本当に辛かったと思います。

池ノ辺 ニコールは家族と過ごす時間はどうしていたんですか?

カリン 彼女は週末になるとエリン・ベルを一度洗い流して、子供や夫と一緒にいたんだけど、彼女の夫は、それでもいつもの彼女と違うから嫌だったみたい。

池ノ辺 完全に自分の中から役を抜いてしまうと、また戻すのが大変でしょうから、どうしても少し残ってしまうんですね。

カリン 大変なことだし、彼女はすごく疲弊していたと思います。

池ノ辺 撮影期間はどのくらいでしたか?

カリン 33日間ですね。

池ノ辺 じゃあ、1か月以上もニコールはいつもエリン・ベルで居続けたのね。

カリン そう、とても大変だったと思います。