Oct 17, 2020 interview

ニコール・キッドマンが迫真の名演、ネオ・ノワールの衝撃作『ストレイ・ドッグ』を鬼才カリン・クサマ監督がオンライン インタビューで語る

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「こんなニコール・キッドマンは誰も見たことがない」
『ストレイ・ドッグ』を見終わると、誰もがそう口にする。彼女が演じるのはLA市警の女性刑事エリン・ベル。17年前の潜入捜査で犯した過ちは、今も彼女に暗い影を落とす。同僚からも家族からも、そして17歳の娘からも疎まれる日々の中で、彼女は再び過去に直面せざるを得なくなる。酒に溺れ、荒んだ日々を送るエリンを演じるにあたって、ニコールは内面を演技で作り上げるだけでなく、凝ったメイクアップでも表現。ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)ノミネートをはじめ、内面と外面からこれまでにないキャラクターを生み出したニコールの演技が絶賛された。

監督は、日本人の父とアメリカ人の母のもとで育ったカリン・クサマ。『ガールファイト』(日本公開2001年)で監督デビュー後、シャーリーズ・セロン主演のSFアクション『イーオン・フラックス』(日本公開2006年)など、女性監督ならではの視点で従来のハリウッド映画と一線を画す演出で知られてきたカリン監督に、映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』の池ノ辺直子がインタビュー。『ストレイ・ドッグ』製作秘話から、ニコール・キッドマンの演技への向き合い方、映画作りと家族についてなどが語られます。予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表でもある池ノ辺が、アメリカで製作される予告編についてカリン監督と話す一幕も。

ニコール・キッドマン衝撃のメイクが生まれた理由

池ノ辺 まず、映画の感想からお伝えしたいのですが、私はすごいラブストーリーだと思いました!ニコール・キッドマンが演じたエリン・ベルという刑事が本当に素晴らしくて。愛する人を奪われて人生を狂わされ、娘をうまく愛せないもどかしさも、すごく切なかったです。私はカリン・クサマ監督の演出と、ニコール・キッドマンの演技にすっかりはまってしまいました。

カリン ありがとうございます。

カリン・クサマ監督 / オンラインインタビュー風景

池ノ辺 ニコールにとっても、大きな挑戦だったと思いますが、彼女の出演はどのように?

カリン 脚本にとても興味をもってくれました。後悔の連続の中で人生を送るキャラクターに興味を持ったんだと思います。彼女がこんな人物を演じることはこれまでになかったから、 とても面白いアプローチをしてくれたと思います。

池ノ辺 ニコールが参加すると決まってどう思いました? ドキドキしました?

カリン 長い間、彼女と一緒に仕事をしたいと思っていました。俳優として、とても尊敬しています。彼女はこのキャラクターについてとても理解していましたし、一緒に仕事をすることにとても興奮しました。

池ノ辺 ニコールに決まってから、脚本は変わったんですか?

カリン 最初は30代半ばくらいのキャラクターを想定していたけど、ニコールが決まって40代半ばのキャラクターにしました。それに合わせてストーリーも少し変わりました。

池ノ辺 今までニコールは土埃にまみれる開拓者を演じても、綺麗でチャーミングでした。それが『ストレイ・ドッグ』では、ノーメイクみたいに見える顔で、ドロ臭くて、ひとつもチャーミングじゃない(笑)。このメイクで演じることに、ニコールも監督もどう思ったんですか?

カリン あのメイクは意識的に取り入れたものです。年齢を重ねて、ダメージを受けた顔というのが、このキャラクターにとってはとても重要でした。今まで彼女が演じてきた役とはかなり違うように見えると思うけど、私はあの顔がとても美しいと思っています。

池ノ辺 ニコールの素顔とはだいぶ違いますか?

カリン 彼女はとても完璧な肌をしています。だから、ソバカスやあの目を作るのも大変だったし、すごく作り込みました。

池ノ辺 素顔だとおもっちゃいました(笑)