May 04, 2020 interview

池ノ辺直子と伊藤さとりが見た、映画と映画界の今

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舞台挨拶の司会をはじめ、映画コメンテーターや、映画レビュー執筆でも大活躍の伊藤さとりさん。新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の余波は、映画と共に生きる伊藤さんの仕事にも大きな影響を及ぼしたといいます。映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』の池ノ辺直子も代表を務める予告編制作会社バカ・ザ・バッカの運営を進める上で10 年先を見越した決断を下したそうです。新作映画の公開が延期され、全国の映画館が休館する中、映画を観客に伝える仕事に長年ついてきた2人は今、映画とどう関わりを持ち、これから先をどう考えるのか。今回からは『映画は愛よ!』の特別編として、現状の問題も含め、今だからこそ話したいことを二人が語り合いました。

映画が停止した世界で

池ノ辺 さとりさん、聞こえますか?

伊藤 聞こえますよー!

池ノ辺 今回は、ビデオ会議でお話したいと思います。新しい映画の話をしようとしても、今はいつ公開なのかが分からなくなってきちゃったので、なかなか紹介できないなと思っていたんです。それで何ができるかなと思ったときに、私たちの今の状況を伝えたり、近日公開になっちゃった映画についてお話しをして、劇場が再開されたときに見たいと思ってもらえたら良いなと思ったんです。まず、緊急事態宣言が出てずいぶん経ちましたが、さとりさんはどうされていますか?

伊藤 私は、映画の舞台挨拶が仕事の7割だったので、それが全部消えました。

池ノ辺 あらら……。それは大変ですね。

伊藤 インタビュー番組を3つ持っているんですが、これも最後の収録が4月の第1週でしたね。それ以降は自宅から外に出ていないんですよ。池ノ辺さんの会社はどんな状況なんですか?

池ノ辺 バカ・ザ・バッカは映画の予告編を作っていますが、3月の末に会社のみんなを集めたの。それで、広い視野をもって目先の利益にこだわることなく、5年後、10年後に良かったと思えるようにしたいと言って、4月1日から在宅勤務に切り替えました。今は5月末まで延長にしたわ。

伊藤 予告編の制作は今、どうしているんですか?

池ノ辺 進行中のものは公開の日にちが変わったので、文字を近日公開に修正したりしています。宣伝の方とは、今年公開の予定を立てているものに関しては、やっていきましょうということで、できあがってきた映画を見たり、オフライン編集をしたりしています。映画によっては劇場公開をやめ配信に切り替えた作品もあります。 BSやCS、配信の宣伝映像はいつも通り動いていますよ。会社は月曜日の朝の会議をオンラインでやっているんです。30人もいるから聞き取りにくかったりするんだけど(笑)。ただ、全員の顔を見られるのでホッとしますね。「熱はないの?」「元気なの?」って声をかけています。さとりさんは、家でも映画について書く仕事をしているんでしょう?

伊藤 新作映画を紹介してレビューを書く仕事もあるんですが、これも公開が延期になったので掲載ができなくなっていますね。ただ、雑誌社やネットの映画サイトは今、旧作を紹介し始めたんです。配信で旧作映画を見始めた人が多いので、そのレビューを求められて。だから、今は自宅で旧作映画を見直しては書いています。

池ノ辺 今は、配信でも昔の映画が見られますもんね。それで言うと、バカ・ザ・バッカでも仕事が一切なくなっちゃう子もいるんですよ。それで私は、「今、家にいることも仕事だよ」って言っています。それから忙しくて見られなかった映画を、DVDや配信で見ておくのも仕事だからって。

伊藤 そう! 新作と旧作って連動していますからね。私も『パラサイト 半地下の家族』で、やっぱりポン・ジュノの映画が大好きだと思ったので、『殺人の追憶』(2004年)からもう一回見直しています。Netflixで作った『オクジャ/okja』(2017年)も見返してみると、あの世界観って『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)からの流れで生まれていることがわかりますよね。しかも、その間には『スノーピアサー』(2014年)があるんですよ。あの映画でティルダ・スウィントンと仕事をしたことで、「この女優さんはやっぱり面白い!」ってポン・ジュノが思ったことが『オクジャ/ okja 』では存分に発揮されているんですよね。

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『パラサイト 半地下の家族』公式サイト: http://www.parasite-mv.jp/