Oct 19, 2017 interview

第1回:今回の東京国際映画祭のテーマは”アートとエンタテインメントの調和”です。

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池ノ辺直子の「新・映画は愛よ!!」

Season18  vol.01 第30回 東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター 久松猛朗 氏

映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」

日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭である東京国際映画祭も今回で開催30回を迎えます。その記念すべき開催回にフェスティバル・ディレクターとして就任された久松猛朗さんに、第30回東京国際映画祭やご自身が関わってきた映画業界などのお話を伺っていきます

→前回までのコラムはこちら

池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)

今回は、来る1025日から開催される第30回東京国際映画祭のフェスティバル・ディレクター、久松さんをお迎えしてお話を伺いたいと思います。

久松さんとは松竹の時もワーナーの時も名刺でご挨拶だけでしたので、ちゃんと話しをするのは初めてですね、よろしくお願いします。

まずは、フェスティバル・ディレクターの就任おめでとうございます。

久松猛朗 (以下、久松)

ありがとうございます。

池ノ辺

今年は第30回という節目の映画祭ですが、これまでとずいぶんと違う形になると聞いています。

久松

まずは祝祭感というか、映画祭の持つお祭りの賑やかさを伝えたいと思いました。

例えばビール祭りとか、区民まつりとか、味わいフェスタとか、そういう催しはすごくわかりやすいじゃないですか。

みんなが気楽に参加して、そこで楽しく飲んだり食べたりできる。

でも、映画祭って、事が起きているのが映画館の中なので、その中の興奮が、チケットを購入して劇場の中にいる人以外には見えない。

池ノ辺

たしかに、外からは、その楽しさがわからないですね。

久松

でしょう。

なので、デザイナーの方にお願いして、キーヴィジュアルに「祝祭感」と打ち立てて、デザインを考えてもらったんです。

で、もうひとつのキーワードは「東京」。

この二つのお題を投げて、作ってもらったんです。

池ノ辺

今回のポスター写真は蜷川実花さんですね。

すっごく色使いがかっこいい!色鮮やかで、ヴィヴィッド!

©2017 TIFF

久松

良いでしょう。

デザイナーは、数多くの広告やCMキャンペーンを手がけられている浜辺明弘さんです。

池ノ辺

東京国際映画祭のこれまでのデザインってゴシック体のモノトーンのロゴの印象が強かったんですけど、明るく、ポップにビジュアルが変わった印象を受けます。

久松さんは松竹やワーナー・ブラザーズで映画に携わってこられましたけど、これまでの東京国際映画祭はどう見ていました?

久松

いや、そんな、29回、じっくりとは見ていません(笑)。

ただ、よかったのは昨年、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)アジアセンターと東京国際映画祭(Tokyo International Film Festival:以下、TIFF)による映画交流事業である「アジア・オムニバス映画製作シリーズ「アジア三面鏡」」の統括プロデューサーをやったことで、TIFFのみなさんと接点ができたことです。

池ノ辺

どうですか? 映画祭全体を運営していくのは?

久松

自分としては、国際映画祭ってこうあるべきじゃないか、と思うことがあったのですが、幹部の皆さんとディスカッションを毎週のようにやっていく中で、「国際映画祭というのはそういうものじゃないですよ」という僕の勘違いも出てくるんですね。

池ノ辺

お祭りじゃないってことですか?

久松

国際映画祭にはいろんなミッションがあるんですよ。

深く関わる行政にしても文化庁と経済産業省という、二つの違う省庁がある。

あるいは東京都、それからスポンサー、映画祭に参加するクリエイター、映画監督、俳優、そして映画ファン、それぞれが映画祭に期待しているものがあり、それがまた全然違っている。

池ノ辺

そうか、バラバラなんですね。

久松

と、いうことがわかってきて、みなさん、それぞれの思いで応援したいと思っているけれど、その方向が必ずしも同じじゃない、というか、まるで違うということに気付いて、なるほどなと。

池ノ辺

フェスティバル・ディレクターとしてはひとつの視線、ひとつの見方に偏っちゃダメですもんね。

久松

そうなんです。

そこで最初にやったのが、ミッションを整理すること。

こんなにいろいろな人からお金をもらって、協力してもらって開催する国際映画祭って何を託されているのか。

それを整理して、スタッフみんなで共有して、意識しようと。

そこを徹底的にブレストしました。

そこから「東京国際映画祭 ビジョン30 アートとエンタテインメントの調和」という方針が定まった。

池ノ辺

そのブレストをした人たちというのはどういう人たちですか?

久松

ここにいる映画祭のメインのスタッフ。

彼らからすごくいいアイデアが出て、それを今回僕は、後ろから押しながら、旗を振ろうと。

ビジョン30の象徴的なメッセージとして、「Expansive映画を観る喜びの共有」「Empowering映画人たちの交流の促進」「Enlightening映画の未来の開拓」を掲げ、そこでスタッフから企画を応募した結果、今回「ミッドナイト・フィルム・フェス!」をやります。

それから「野外上映 Cinema Arena 30」や、子どもに向けた「TIFFティーンズ映画教室」もある。

そしてJapan Nowでの「銀幕のミューズたち」もスタッフからのアイデアです。

池ノ辺

なるほど、ティーンズの映画教室は映画の未来の開拓ですものね。

「銀幕のミューズたち」も、女優の安藤サクラさん、蒼井優さん、満島ひかりさん、宮﨑あおいさんと今大活躍されている方々の特集ですし、面白い企画ですよね。

すごく楽しみにしています。

久松

そう、すごく面白い企画。

『トリビュート・トゥ・ミュージカル』は僕がこだわった部門だけど、それ以外はすべて、若いスタッフからのアイデアなんですよ。

池ノ辺

それはすごい。

下からの意見をすくっているから、チェアマンじゃなくて、フェスティバル・ディレクターなんですね。

だから、色々楽しそうだという雰囲気がすごく伝わってくるんですね。

久松

それが一番嬉しいですね。

僕はトップダウンの人間じゃないし、チェアマンの色みたいなものもないので、逆にブレストの段階から、みんなのアイデアを出してもらってやっている。

「ミッドナイト・フィルム・フェス!」なんて、やりたいスタッフが有志的に集まってやっているので、すごく生き生きとしていますよ。

池ノ辺

スタッフにとっても嬉しいですよね。

今年はワクワク映画祭ですね。

では次回も引き続き、映画祭のお話を聞かせてください。

(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)


©2017 TIFF

第30回 東京国際映画祭

今年、第30回を迎える東京国際映画祭(以下 TIFF)は、日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭です。

1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生し、日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残し、アジア最大級の国際映画祭へと成長しました。創立時から映画クリエイターの新たな才能の発見と育成に取り組み、アジア映画の最大の拠点である東京に、世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、交流する場を提供します。

今年のオープニング作品は『鋼の錬金術師』、オープニングスペシャル作品は『空海~KU-KAI』、クロージング作品は『不都合な真実2: 放置された地球」となります。

チケットの一般販売は1014日より開始中。

会期: 20171025日(水)~ 113日(金・祝)[10日間] 会場: 六本木ヒルズ、EXシアター六本木ほか。

公式サイト http://2017.tiff-jp.net/ja/

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PROFILE

■久松猛朗(ひさまつたけお)

第30回東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター

1954年山口県下関市生まれ。78年松竹株式会社に入社。宣伝プロデューサー、映画興行部・番組編成担当等の勤務を経て86 にアメリカ松竹「リトル東京シネマ」の支配人となる。89 に東京へ戻り、興行部次長に就任。94年タイムワーナーエンターティメントジャパン株式会社に入社し、ワーナーブラザース映画の営業本部長となる。その後、松竹株式会社に再入社し、2001年取締役映画部門&映像企画部門を担当。03年に常務取締役に就任する。06年株式会社衛星劇場 代表取締役社長を経て、10年ワーナーエンターティメント・ジャパン株式会社に再入社。ワーナーブラザース映画 副代表となる。現在はマイウェイムービーズ合同会社 代表。

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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