Nov 23, 2017 interview

【荒川弘ロング・インタビュー】原作者は実写版『鋼の錬金術師』をどのように観たのか?

A A
SHARE

 

──メインキャスト以外ではいかがですか?

タッカー役の大泉洋さんは、まず同郷の星に出演していただけたのが素直に嬉しい(笑)。大泉さんからタッカーの新たな魅力を引きだしてもらいました。マルコー役の國村準さんは、少ない出番にもかかわらず目の演技だけでも見せてくださったのは、さすがの一言。とにかく隅から隅まで主役級の方が出演されているのがスゴい。

 

 

──他にはハクロ将軍(小日向文世)など曽利監督の展開が多分に用意されています。ご覧になられて、どう捉えました?

頭から最後まで原作を知っている身としても、曽利監督の視点が加わることで、次どうなる?どうなるんだ!? と追う楽しみがありました。しかも色々と変化を付けながらも、あれ?本筋は合っているぞ!という。どんどん飛んでくる変化球が面白い。原作のエッセンスはキレイに残しつつ、見事に予想した展開を裏切られていくんですよね(笑)。

 

 

曽利監督なら『ハガレン』をお任せできるなと思いました

 

──キャストのビジュアルに関してはいかがでした?

大分原作に寄せていただきましたよね。でも、私としてはキャラクターが表現できていれば、全然外見は気にならなくて。撮影に入る前に、エドやウィンリィについては「別に金髪キャラですが、日本人なのだし、もう少し茶髪にしてもいいのでは?」とお話しました。実際、ウィンリィは茶色ですけれど、SLでのエドとアルの兄弟とのシーンではむしろ茶色の方がシックリしていましたからね。原作に寄せずとも実写としてのキャラが立っていれば、何も問題ないなぁと思っています。

──先ほどのエドの走り方がまんまだった、という話にも通じますが、山田さん、本田さん、本郷さんは熱烈な原作ファンなので、忠実に再現しようという想いがあったんでしょうね。

逆に読んでいるからこそ、縛られずもっと自分の解釈を出していいなとは思いました。内容やビジュアルに関しても監督が思った『ハガレン』でお任せしたいなと思っていましたので。

 

 

──今作はリオールの街並みの再現や、アルの存在感、マスタングの焰……と、曽利監督が得意とされているCG技術がフル活用されて、見事壮大なスケールの『ハガレン』世界を再現されていました。その辺りの再現度はいかがでした?

始めに曽利監督から「数年前のCG技術では作れませんが、今の技術なら制作できますので作らせてください」とオファーをいただいて。曽利監督は『ピンポン』(02年)で初めて観た時に、CGを駆使した漫画的な表現とリアルの融合が上手な監督だなと思っていたので、お任せできる方だなと。それに私も「それは観てみたいな」と思い、承諾したのが実写映画のスタートのキッカケでした。一度現場を拝見に伺わせていただいた時、CGが入っているわけではないので、どうなるんだろう?と思っていたら、この前の試写で、こうなるのか!!と驚きました。全編フルCGのアルをはじめ、日本のCGは日々進化しているんだなぁというのを教えてもらいつつ、ここに至るまでどれだけの手間がかかったのかと考えたら頭が下がる思いですよ。

 

 

──脚本の製作段階で曽利監督から、アドバイスを乞われたそうですね。アニメ版では監修も手掛けていらした荒川先生としては、何か今作の脚本で意見を出したりは?

特に注文はつけなかった気がします。気になるところは監督に少し相談しましたけど、その気になるところも「この濃厚な内容が2時間で収まるのか?」という心配ぐらい(笑)。本当にお任せして、私はただただ完成をひたすら楽しみに待つだけでした。

──では、荒川先生としても、一視聴者という側でしかなかったと。

そうでしたね。アニメの時も特に口を挟むでもなく「出来上がりが楽しみだなぁ」と心待ちにしていましたから……仕事をしない原作者でスミマセン(笑)。私は座右の銘ではないのですけど「餅は餅屋」という言葉を大切にしていて。映画やアニメ制作に関して私は何も知らないので、内容のチェックならいくらでもやりますが、制作される際には制作者の好きにやってほしいなと常に思っていて。