Sep 30, 2026 interview

宮澤美保 × 平野ノラ インタビュー それでも、この映画を届けたかった――深川栄洋監督と貫いた思い 映画『あなたの息子ひき出します!』

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――あのカツラを着ける意味はなんだろうと、確かに思いました。

宮澤 役者で言うと、衣装とかで気分が上がったり、その役に入れたりしますよね。そういうのの一般バージョンではありませんが、【典子】の中で「行くぞ!」というスイッチみたいなものです。【典子】自身がひとつ演じているような感じにしたら、演じる私もそうなれる気がして、“いいな”というのがありました。ちょっと説明が難しいんです。カツラをかぶるというシチュエーションって、あまりありませんよね。でも私にはそのアイテムが必要だったんです。ただ監督には「カツラをかぶることが出来れば、ずっとそういう髪型の人でもいい」という話をしていました。でも監督が「せっかくだから、かぶる動作みたいなものも日常の中に入れよう」という感じになり、ノラちゃんもカツラをかぶることになりました。

平野 そうそう、私も (笑)。でもこれがコミカルな感じに作用して、面白いですよね。していることは凄い大ごとだから、何かいい感じにそれを表現出来たような気がしています。しかも美保さんは本当に少しずつ【典子】になっていくんです。その姿をそばで見ていました。私は映画の現場が初めてだったので、どのくらい監督が怒ったり、強めに言うとかを知らないのですが、【典子】さんには監督が凄く厳しいんです。

宮澤 そんなふうに見えていたんですか?

平野 もの凄く厳しいと思っていました。私たちには向けないような‥‥、そのくらい【典子】という役は難しいですから。この役は難し過ぎて、私も今まで見たことがありません。この役を演じるにはオーバーでもいけないし、鈍感な演技も必要だし。【典子】さんがドンドンと【典子】になっていって、それをそばで見ていて“本当に【典子】だ”という感じでした。凄かったです。

――【典子】は、観終わってみると確かに細やかな動きや表情をもう一度確認しながら観たいと思う役でしたもんね。ちなみに彼女の事をノラさん演じる【由梨】はどれくらい気づいているんでしょうか。

平野 そうですね。“なんか変な人だなぁ”くらいは思っていて、でも生活の為に一緒に暮らしていて、でも凄く寄りかかっている感じでもない。自然に色々と受け入れて暮らしてきている。生活の時間を共にしている感じが出ているのが映画に映っていたと思うんです。

宮澤 思うのですが、“ちょっと普通の人と反応が違うな?”とか“ちょっと合わないところあるな?”くらいな感じじゃないですか、だから深い部分は気づけないと思うんです。

――確かに。【典子】が売春婦だったところから始まります。その仕事が自分の存在意義みたいに思っていて、[ひきこもり]の男性のケアをすることも天職だと思っている人物ですよね。役を演じるにあたってどこら辺までリサーチされたのですか。

宮澤 【典子】のリサーチは、ひたすらヒントになりそうな方たちをYouTubeなどで探して、その動画を見ていました。もちろんひきこもり支援の人たちの動画も見ましたし、今は凄くいろんな方々が発信をされていて、知ることができるので助かります。現場に入るまで、ずっと観ていましたね。ノラちゃんは?

平野 特にはリサーチしてないですね。深川監督に「素直に台詞を言い過ぎだよ」と言われて、そんな言葉は初めて言われました (笑)。”え?どういう意味?“って思いました。後は「普段から野良猫のような佇まいでいるように」とか言われたりしたんですけれど、その言葉は分かり易かったです。

宮澤 確かに猫っぽい。

平野 「ちょっと居心地の悪さを感じていて」と家に招き入れられる頃は言われたりして、“確かにそうだよな、居心地悪いよね。こんなところ来たくないって思っているよね”というのを事細かに指導してくれたんです。そのお陰で、何とかやって来れたという感じです。素直に吸収していきました。