Jun 13, 2019 column

トニー賞授賞式の宴が終わって、ブロードウェイhere and now

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リバイバルミュージカル作品賞『オクラホマ!』

リバイバル・ミュージカル作品賞で『キス・ミー・ケイト』 を退けて受賞した『オクラホマ!』にも注目したい。

『オクラホマ!』は、『回転木馬』『王様と私』などの名作を続けて世に出したロジャースとハマースタインによるミュージカルで、1943年当時、額面が5ドル弱のチケットにプレミアがつき、50ドルまで高騰したという。

今回、ブロードウェイ史上初の大ヒットだった同作品の6回目のリバイバルとなる。斬新な手法で知られる演出家ダニエル・フィッシュのブロードウェイ・デビュー作品だけあって、一味も二味も違う。世に知られている作品なのであらすじは触れないが、ストーリー展開は工夫されている。 例えば従来の第一幕の最後にあるカーリーが夢を見るシーンは、完全に省かれて、その代わり二幕目が黒人女性のダンスで始まる。彼女は「Dream My Dream」と書かれた白いTシャツを着て、緊迫した雰囲気を醸し出す振り付けと音楽で踊り続ける。そのダンスの合間にブーツが何足も天井から降ってくる。

終盤の見どころは、恋敵のジャッドが、カーリーとロリーの結婚式場に乱入してカーリーをナイフで襲う場面だが、今回はナイフが銃に代わっている。しかもジャッドがそれをカーリーに渡し、自分を撃たせ、カーリーはその返り血を浴びて、一瞬誰が撃たれたのか良くわからない緊張が走る。大団円では正当防衛となったカーリーが、やはり返り血を浴びた花嫁や村人達と楽しそうに楽曲『オクラホマ!』を歌う。超現実的で不気味なラスト・シーンだ。

この作品は好き嫌いがはっきり分かれるだろう。古典的な名作を期待するのではなく、ブロードウェイ作品の創り方のスタイルのひとつを観る感覚で、鑑賞に行かれることをお勧めする。千秋楽は2020年1月19日に予定されている。