Dec 29, 2020 column

『美少女戦士セーラームーン』『少女革命ウテナ』 かつて蒔かれた種は時代の中で芽吹いてきている

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番組でも語られていたが『セーラームーン』は本放送時、番組ターゲットである女児層以外のアニメファン層にも男女を問わず人気があった。むしろ当時の風潮としては男性ファンもかなり多かった。男性アニメファンにとっては美少女アニメという括りだったと言ってもいい。

アニメ史的な文脈においては『セーラームーン』は主人公ヒロインを“戦う女の子”にした起点や転換点として語られることが多い。「80年代OVAでもあったろう」と言うかたもいるだろうが、正確に書けば「女の子(女児)向けの作品で」という冠がつき、これはとにかく大きな転換点だった。
それまでの女児向けアニメにおける女の子と男の子の関係は、基本的に古来からある「お姫様と王子様」だった。お姫様はどんな力を持っていても王子様に守られる存在である。

『セーラームーン』は作中の設定こそお姫様(セーラームーン、プリンセス・セレニティ)と王子様(タキシード仮面、プリンス・エンディミオン)という古来からの王道をなぞっているが、従来は受け身であり守られる存在であったお姫様(女の子)に、「守られるだけの存在ではなく、自分から戦って勝ち取り、守る」という意思と決意を示させた。

劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」《前編》

その点において『セーラームーン』は日本の女の子文化史だとか、さらに言えばフェミニズムカルチャーを振り返るときに、90年代に起こった小さいがとても大きい転換点の象徴ともいえる。子供向けとされる作品において、女の子の意思のあり方そのものの変化を前面に出してきた。エンディングソングだった『乙女のポリシー』の歌詞もそんなコンセプトそのものを宣言している。『大投票』において同曲の生歌唱が披露された際に画面に表示された視聴者の反応ツイートの数々は、それが当時子供だった彼女たちにしっかり伝わり、30年間にわたって彼女たちの背中を押し続けていたことが語られており、流れる文字を読んでいるだけでちょっと胸にくるものがあった。

キャラクター人気1位が主人公のセーラームーン(月野うさぎ)ではなくセーラーウラヌス(天王はるか)であるというのは意外な気がした一方で、そういった革命性が彼女たちに届いていたことを表していたようにも思う。はるかはアニメでは普段は男装の麗人として描かれ、原作では男性や女性といった性を超えた存在であると語られている。思い返してもウラヌス(はるか)のジェンダーレスな設定(原作含む)は、大人向けとされているい映画やドラマの作品を含めてもあまりに早すぎた。当時はまだピンと来る人の方が少なかったのではないかという気がする。(正直に書くと僕もそうだった)
おそらく、当時と今では見る側にとっての受け止め方や印象が大きく変わっているキャラクターではないかと思う。

それだけのものを内包していた作品であり、見ていた子たちに残り続けているものであったからこそ、それが「非アニメファンの、とりわけ男性層にはほとんどまともに知られていないか勘違いされている作品じゃないのか」ということに疑問を感じるのだ。見ていた彼女たちの多くは今では社会で僕らとともにいる。その彼女たちがどういうベースの上に立っているのかを知らないという無知さへの疑問だ。

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