Nov 25, 2020 column

『魔女見習いをさがして』が描く“あの時”と“今”の私を繋ぐほんとうの魔法

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悩み、つまづきそうになる彼女たちの背中を、かつて見た『どれみ』が少しだけ押してくれる。それはまるでシリーズ本編の物語においてどれみが友だちにやっていたことそのままだ。リアルタイム視聴だった人たち、後に再放送や配信で見た人たち。大人も子供も男女も問わず、見ていた人にとって『どれみ』はたんなる「昔に人気だったTVアニメ」ではなく、4年間、同じ学校、同じクラスでいつも誰かを応援し続けてくれたクラスメイトだった。その懐かしい友だちが今また背中を少し押してくれる。
なぜ僕が「魔法で問題を解決をしなかった話」が好きであったのかもようやくわかった。『どれみ』は魔女としての魔法だけではない、本当の魔法を描き続けていたのだ。そこにこそ僕にとっての『おジャ魔女どれみ』が何だったのかがあった。それがこの映画でも描かれ、その魔法の本当の力を教えてくれる。
本作にはいくつもの魔法が登場する。例えばアニメ作品『どれみ』が描いていた魔法と、それを見ていた人たちの中にある魔法だ。僕が好きだったもの、惹かれていたものは現実に繋がっていた。そう考えるとタイトルにも使われている「魔女見習い」も、どれみたちおジャ魔女のことだけではなく、まだまだ人生道半ばである“大人になった視聴者たち”のことをも指しているのかも知れない。
「もし『どれみ』でやっていたことを大人を主人公にして作ったらこうなる」「もし、大人になったどれみたちの物語であってもこうなる」であり、しかも『おジャ魔女どれみ』という作品があったからこういう映画になった。
上映後はとても不思議な気分にとらわれる。どれみたちが主人公ではないのに間違いなくこれは『おジャ魔女どれみ』で、どれみたちに再会した気分になった。見終わった後に「『どれみ』の新作を見た」という印象がちゃんと残る。それも「懐かしかったね」ではなく、大人になった人たちに必要な『どれみ』の新作を見ることが出来たという印象だ。

もちろん『おジャ魔女どれみ』を見たことがない人であってもこれは間違いなくアプローチする作品になっている。変な例えだが『フラッシュゴードン』を見たことがなくても『テッド』を楽しめるのと同じだ。それが今の若い女性の映画でもある部分だ。

放送終了から17年を経て作品と受け手を現実で繋ぎバトンまで渡してきた。その間もおジャ魔女たちは見ていた誰かたちの背中を少しだけ押し続けていた。「あなたは1人ではないし、あなたたちには未来がある」というメッセージは本作にも繋がっている。男女を問わず、とかく生きづらさを感じてしまう現代だからこそ、よけいにこのメッセージが心に響いてくる。作品が心に残るとはこういうことなのだ。この作品が教えてくれた最大の魔法だ。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)

作品情報
『魔女見習いをさがして』
おジャ魔女どれみ20周年記念作品 映画『魔女見習いをさがして』

「ねえ、大きくなったら何になりたい?」

教員志望でありながらも、自信をなくして進路に戸惑う大学生・長瀬ソラ――名古屋

望んだ仕事についたものの、職場になじめず葛藤する帰国子女の会社員・吉月ミレ――東京

夢に向けて進学費用を貯めるも、ダメ彼氏に振り回されるフリーター・川谷レイカ――尾道

年齢も性格も住んでいる場所も…なにもかもが違う三人。しかも、それぞれ思い描く未来が見えず、人生に絶賛迷い中!そんな彼女たちを引き合わせたのは“おジャ魔女どれみ”!?

かつて魔女見習いたちが集っていたMAHO堂――鎌倉にある洋館での運命的な出会いをきっかけに、三人は飛騨高山・京都・奈良と「おジャ魔女どれみ」ゆかりの地を巡る旅へ!笑って泣いて支え合って、かけがえのない時間を過ごした三人は改めて気づく、いつもどれみたちがそばにいてくれたことに。そして魔女見習いたちに背中を押され、踏み出した先に、素敵な世界が広がっていた――

声の出演:森川葵 松井玲奈 百田夏菜子(ももいろクローバーZ)千葉千恵巳 秋谷智子 松岡由貴 宍戸留美 宮原永海 石田彰 浜野謙太 三浦翔平

原作:東堂いづみ 監督:佐藤順一 鎌谷悠 脚本:栗山緑 音楽:奥慶一 キャラクターデザイン・総作画監督:馬越嘉彦

アニメーション制作:東映アニメーション

ⓒ東映・東映アニメーション

2020年11月13日 公開

映画公式サイト:https://lookingfor-magical-doremi.com

20周年公式サイト:https://doremi-anniv.com