Mar 23, 2019 column

『マクロス』が熱狂させたアニメ新時代の革命性が、いま教えてくれること

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昨年の『ガンダム投票』に続き、NHK BSプレミアムでこのGWに大型アニメ特番『全マクロス大投票』が放送される。1982年の1作目『超時空要塞マクロス』から2016年の『マクロスΔ(デルタ)』まで、全ての『マクロス』シリーズを対象とした視聴者参加投票の企画で、現在公式サイトではその投票受付が行われている。連休中には(とりわけ今年は10日間の大型連休ということもあり)アニメファン向けの幾多のイベントがあるが、これもTVで参加できる大型イベントの1つと言えるだろう。 (番組サイト:https://www.nhk.or.jp/anime/macross/ )

先行して同じくBSプレミアムでは3月30日(土)夜に『歴史秘話ヒストリア』とコラボした『歴史秘話 マクロスヒストリア』も放送となる。

これらの番組に限らず、昨年あたりから『マクロス』周辺はちょっと賑わしくなっている。肝心のアニメは『マクロスΔ』完全新作劇場版の制作が発表されており、こちらは続報が待たれる状態だが、アニメだけの話ではなくトイなども含めた周辺全体がちょっと賑わしい。 年明けからは各地の映画館でこれまでの劇場版『マクロス』作品全7作の上映イベント『マクロス爆音映画祭』が開催されている。歌、音楽、戦闘シーンの効果音と“音”が大きなウェイトを持つ『マクロス』シリーズにとって見事にハマる形式での再上映スタイルだ。

模型ではマックスファクトリーから『VF-1 スーパー/ストライク ガウォーク バルキリー』が発売。バルキリーではあってもあえて変形機構は取り入れず、商品名のとおりガウォーク形態でのキット化という物だが、特筆すべきはそのサイズ。なにしろ1/20で、その大きさには度肝を抜かれる。パーツの大きさを考えたとき、技術の進歩が実現したアイテムだと言えるだろう。

トイでも冬にバンダイが大人向け商品シリーズの『DX超合金』で『VF-1J バルキリー(一条輝機)』を発売。ディテールの細かさとギミック。そしてバルキリーの肝である変形機構の再現とプロポーションの両立と、おそらくVF-1 バルキリーのトイとして現時点では頂点ではないか。

さらに、これは『マクロス』以外の作品も含まれることになるが、5月末からは東京ドームシティの『Gallery AaMo (ギャラリーアーモ)』にて、『マクロス』シリーズで主役メカをデザインし、多くで監督も務めてきた河森正治の仕事に絞った一大展示イベントが開催される。 河森正治40周年企画 『河森正治EXPO』(EXPO情報サイト:https://kawamoriexpo.jp/ )

『マクロス』シリーズは、僕のような現在50過ぎのアニメファンの多くにとっては、たんに息の長いヒットシリーズ以上の大きな意味を持つ。1作目『超時空要塞マクロス』はとてつもない衝撃だった。80年代初頭の『ガンダム』ブームの熱狂が冷めやらぬ頃。多くのアニメ雑誌が創刊され、「それまでの子供向けとはちょっと違うアニメ」がいくつも生まれ始めていた中にそれはあった。放送前から雑誌に掲載されていた数々の設定やあらすじは「なんかものすごいSFアニメが始まるぞ?!」と大きな注目を集めた。そして実際に僕らは熱狂した。

『宇宙戦艦ヤマト』以前/以後、『機動戦士ガンダム』以前/以後があるのと同様、『マクロス』以前/以後でもたらされた変化や影響はあまりにも大きい。 『マクロス』シリーズ共通の柱は「変形メカ、アイドル(歌)、三角関係」だ。実際、この3点において、以前/以後のアニメは大きく変わり、その影響は現在でも続いている。 現実のF-14戦闘機的なシルエットを持つバルキリーが複雑怪奇なプロセスによって人型へと変形するギミックは、その直後の幾多のロボットアニメから現在に至るまであまりに大きな影響を与えている。「バルキリーの衝撃がなければああならなかった」というロボットアニメは20や30ではすまないはずだ。 アニメにおけるアイドル像も、リン・ミンメイの「声優がそのキャラクターとして歌う」スタイルはキャラクターソングの先駆けだ。今でこそあたりまえだが、ミンメイがなければ『ラブライブ!』や『うたプリ』といった現在のアイドルアニメへと繋がる歴史は大きく違っていただろう。 また、音楽描写はアニメのみならず、現実のアイドルや音楽シーンの時代ごとの変化も反映している。音楽に菅野よう子を起用した『マクロスプラス』でのアイドルはヴァーチャル・アイドル。今では現実に(当たり前のように)存在しているが、これが制作されたのは94年だ。『マクロス7』ではそれまでの女性アイドルではなく男性ボーカル率いるロックバンドが主人公となる。『マクロスΔ』では現実のアイドルがソロよりもグループが主流となったことに合わせアイドルユニットに。

『マクロス』シリーズというフィクションは絶えず現実をも反映させてきた。一つのクロニクルを形成し、そこには作中の架空史や技術が厳然と存在する。それはすでに、例えるならアメリカの『スタートレック』や『スター・ウォーズ』のような、広がり続ける世界観だ。