Jan 28, 2019 column

ファンならずとも必見!『映画刀剣乱舞』が示す実写映画化の“正しさ”

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『映画刀剣乱舞』(http://touken-movie2019.jp/)が公開となった。…と書いても、男性には「ふうん」という反応の人の方が多いかもしれない。

かくいう僕も、発表当初はそんな感じだったのだが、劇場のポスターで脚本が小林靖子だということを知って、変わった。『進撃の巨人』や、今期放送中の『どろろ』などのヒットアニメを多く手がけている脚本家であるが、それ以上にやはり小林靖子と言えば幾多の戦隊物や平成『仮面ライダー』作品においてメイン脚本を手がけてきた特撮ヒーロー物の名脚本家だ。その小林氏が『刀剣乱舞』を手がけるというのはちょっと気になる。監督は『百瀬、こっちを向いて。』(14年)、『暗黒女子』(17年)の耶雲哉治。この2作は好きな映画であったので、それも気になった。

が、やはり女性客メインの作品という印象は拭えず躊躇していたのだが、いざ公開が始まり周囲で見に行った数名の男性陣の反応を見聞きしたところこれがすこぶる良く、さっそく僕も見に行ったのだが、予想を見事に裏切らず面白い映画だった。あらかじめ書いておくと『刀剣乱舞』の世界観(というかファンの側の熱狂)を詳しく知らない者による話になるので、ファンの方からは「ナニヲイマサラ…」と思われることなども書いてあるかと思うのだが、そのへんはご容赦いただきたい。

「トレンドワードなどでよく目にするのでタイトルは知っているが、どういう作品なのかは全く知らない」という方も多いかと思うので、まずは簡単に説明をしておこう。 『刀剣乱舞』(通称:とうらぶ)は、正式には『刀剣乱舞-ONLINE-』。15年にDMMゲームズとニトロプラスによって製作されサービスが開始したブラウザゲームだ。 西暦2205年。戦国時代や幕末など、様々な時代に介入し歴史改変を目論む勢力に対抗すべく、名だたる日本刀の付喪神が人の姿となった「刀剣男士」が過去に送り込まれ、その謀略を阻止すべく戦う…というのがおおまかな設定だ。日本刀が擬人化された刀剣男士はそれぞれが個性的なイケメンキャラで、プレイヤーは彼らを集め育てていくというのがポイントとなる。

様々な時代を舞台とするため歴史物としてのネタや面白さがちりばめられ、擬人化される刀剣も実在の物、あるいは実在されたとされる名刀がモチーフとなっており、その銘がそのままキャラクター名となる。 ファンのメイン層は女性で、火のついた大人気の中、このゲームから興味をもった女性が各地の日本刀展に多く訪れるようになったことも話題となった。実際、数年前に僕が行った日本刀展も女性客があまりに多く驚いたことがある。 また、いわゆる「2.5次元舞台化」も精力的に行われており、15年にミュージカル化。16年からは舞台化(ミュージカル版とは異なる)も行われ、こちらも大人気だ。もちろんアニメ化もされている。『刀剣乱舞-花丸-』(16)は戦闘シーンも少しはあるが、メインは刀剣男士たちの日常を舞台としたコメディ色の強い作品。アニメーション制作は動画工房で、第2期まで放送されている。もう1作『活撃 刀剣乱舞』(17)は敵との戦いを描く時代アクション物。こちらは制作がufotable。音楽が深澤秀行で、大ヒットした『Fate/Zero』『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』のスタッフ陣が多く携わり映像化されている。映像ルックやアクションの見せ方などは『Fate』を見ていたアニメファンも惹きつけるものがあり、僕もこの『活劇』は毎週見ていた。こちらは新作劇場版の製作が発表されている。

そしてこの実写映画版だ。アニメ『活劇』は見ていたといっても、それはあくまで「アニメ『活劇』が面白かった」であって、べつだん僕は『刀剣乱舞』そのもののファンだなどとは言えるレベルではない。しかしそんな僕からしても楽しめた。