Jan 28, 2019 column

ファンならずとも必見!『映画刀剣乱舞』が示す実写映画化の“正しさ”

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「時代劇には客が来ない」と映画でもテレビでも時代劇の減少や衰退が言われて久しい。だが一方で『刀剣乱舞』に限らずゲームやアニメやコミック(少年コミック、ファンタジーも含)では時代劇設定・時代劇っぽいガジェットが登場する作品は今なお数多く展開されており、大ヒット作も多い。決して嫌われているジャンルでも設定でもない。むしろ逆だ。衰退した減ったと嘆いているのは実写分野のみになる。その両者の間にあるものは何なのだろうと考えたとき、思いつくのは「時代劇とはこういう物」「そんな突拍子もない物は時代劇ではない」といった保守的な概念への固執ではないかという気がしてならない。 『刀剣乱舞』が証明したように、そこから歴史物や刀剣といった時代劇を彩るガジェットにも興味を広げていく人も数多い。関連することが描かれている時代劇に興味を持つ人がいるのもまたしかり。最近は史実にこだわらない、あくまで時代劇的な世界の面白さを前面に出した「ネオ時代劇」と呼ばれるジャンルも言われつつあるが、それは“正しい”時代劇を否定し失わせる物ではなく、時代劇への新たな入口だ。それを否定してしまうことこそ、衰退への本当の危険ではないか。

「女性向けゲームの、それも舞台版みたいな実写化なんでしょ」と思い、見過ごしてしまうのはあまりにもったいない作品だ。前記のようにファンと呼べるようなレベルではない僕からしても、ストレートな面白さがあり、実写化とは何かを考えさせられ、時代劇は本当に衰退していくのかということへの解が感じられる。あまりにも見所が多い作品だった。

最後に余談であるが。映画館で本編上映前に流れるおなじみのマナー広告「NO MORE 映画泥棒」。この『映画刀剣乱舞』で上映前に流れるものは映画版のキャストがキャラクターのまま登場するコラボ版となっている。おそらくソフト版などへの再録はあまり望めないのでファンの人にはそれだけでも劇場ならではのお楽しみなのだが。 実はそもそもの「NO MORE 映画泥棒」(通常版)のディレクターが、この映画の監督の耶雲哉治という、そんな繋がりがあったりするのもオマケである(笑)。

(文中、敬称略)

文 / 岡野勇(オタク放送作家)