Apr 27, 2018 column

『リズと青い鳥』が描きだす青春映画の本質 アニメとリアルの狭間が奏でる少女たちの感情

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新作アニメ映画『リズと青い鳥』が公開された。

多くのアニメ映画がヒット&話題となった16年、その1本でありロングヒットとなった『聲の形』の山田尚子監督と、同作のメインスタッフが再集結した新作で、発表時から楽しみにしていた作品だ。

高校3年。最後の大会を控えた吹奏楽部。その部員でオーボエを担当するみぞれと、フルートを担当する希美。親友の2人は共に出られる最後のコンクールで、童話『リズと青い鳥』を題材とした楽曲の掛け合いパートを演奏することとなる。 「ひとりぼっちの少女・リズ。その前に1人の女の子がおとずれる。彼女によってリズは孤独から解放され幸せな時間を得る。だがその子には秘密があって…。」 自分にとっての幸せと他者の幸せを描いた切ない童話。その物語はみぞれたちにもうすぐ訪れる卒業と別れへの不安とかさなり、2人の間に静かな不協和音が流れはじめていく。2人の少女の揺れ動く微妙な感情を描いた青春劇だ。

えらい映画を見てしまったなあが所感だった。「えらいアニメ」ではなく「えらい映画」だ。セリフを物語を進行させるためのものとして使わず、アニメーションという手法ならではの光や時間のコントロール、カリカチュアとリアリスティックの狭間の動き。構図。吹奏シーンの音。スクリーンにある映像と音の全てによって物語られていく映画だ。 山田監督の前作『聲の形』では、ヒロインが聴覚障害をもつがゆえに言葉によるコミュケーションが難しい関係性が描かれた。今作は言葉では表せない気持ちをどう伝えるのか?というコミュニケーションとディスコミュニケーションのドラマだ。言葉にしなければ気持ちは伝わらない。だが、言葉に出来ない気持ちはどう伝えればいいのだろう。

この作品はセリフを額面通りに受け取れない。セリフや言葉を信じていないのではない。信じているからこそ、時にその言葉は本心とは異なることがわかっている。だからセリフではなく、彼女たちの微妙な動きや仕草がセリフ以上の言葉となって心情を伝えてくる。

劇中の舞台をほとんど学校の中だけに限定し、自分たちだけの世界にいる女の子2人の関係が揺れ動く様を淡々と、緻密な表現の積み重ねで描いている。彼女たちの青春期にある“自分たちだけの時間”の切り取りかたの見事さには心ふるわされた。

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