Jan 28, 2019 column

ファンならずとも必見!『映画刀剣乱舞』が示す実写映画化の“正しさ”

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歴史改変を目論む時間遡行軍により本能寺の変を生き延びた織田信長。正しい本来の歴史を護るべくその暗殺を目指す刀剣男士と遡行軍の闘い。さらにそこに羽柴秀吉の野望が絡み合い、熾烈な闘いが展開されていく。「主人公たちは日本刀が人の姿となったもの」という設定だから可能なエピソードやドラマや二転三転する展開は引き込まれ、何より見せ場であるアクションは映像化ならではの激しさで描かれ爽快だ。「“正しい”歴史とは何か?」「なぜ正史を護らなければいけないのか?」というキーワードの設け方も上手く、これが随所で意味を持つ。

作品の中身だけではなく、それ以外にもこの作品には見るべき部分が本当に多いと感じた。個人的にはやはり前記したように、僕がそもそも「お」と思った理由である小林靖子脚本だ。僕が「脚本:小林靖子」を知り、意識し始めたのは『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99)で、忘れもしない『第34話 死 さもなくば 破滅』。主人公たちゴーゴーファイブが「自分たちが死ななければ、自分たちに仕掛けられた毒によって人類が滅ぶ」という究極の選択を迫られる緊張感あふれるエピソード。極限状況の中、ヒーローである主人公たちの人間としての弱さと絶望が葛藤となる。長らく戦隊もの視聴からは離れていたのだが、たまたま見たこの回に驚き、食い入ってしまい、以後毎回見ていた。翌年の『未来戦隊タイムレンジャー』も小林氏がメインライターを務めると知って見始め、02年の『仮面ライダー龍騎』でさらに衝撃を受けることとなる。小林ヒーロー脚本の魅力は、ヒーローの葛藤や“正義”(あるいは“正しさ”)という概念の多面的な描き方。登場人物にギリギリの選択を迫る厳しさと、それを超えさせるカタルシス。それでいてシリアス一辺倒ではなく豊かな娯楽性だ。本『刀剣乱舞』もそれが存分にある。

「ゲーム原作の実写映画化」という点でも感心させられた。本作で刀剣男士を演じる主要キャストは舞台版での俳優陣が引き継がれている。正直に書けば、それは僕も含めてだが、“ファン以外”の層からすればあまり馴染みがない。だが、原作を支え、舞台版を支えてきた数多くのファンにとってはこれほど納得がいき、満足が出来、「見たいものが見られる」という配役はないだろう。ファンの人々の反応を見ていてもそれが強く伝わってくる。 愚かなプロデューサーであれば、「世間知名度の高いイケメン俳優やタレントを起用しましょう」としてしまうのかもしれない。だが本作は「たくさんの、確実にいる原作ファンと舞台版ファンを1人も逃さずに確実に掴みたい」という“当たり前”のことを徹底的なレベルでやっている。ファンが『刀剣乱舞』というものの何に・どこに惹かれているのかに真正面から応えている。その最たる部分がこの配役だ。

ゲームであろうがコミックであろうがアニメであろうが、原作物の実写化においてこれは“当たり前”のことなのだ。その“当たり前”のことが出来ていない・やっていない作品があまりにも多すぎるというだけで。確実にいる原作ファンを確実に掴む前に、ナゼか“それ以外の(いるかどうかもわからない)客”のことばかりを考え、結果、原作ファンからは嘲笑され嫌悪され見向きもされない愚かな原作物実写化がどれだけ多く存在しているかを考えたとき、この作品の反応と受け入れられ方は見習うべきだろう。そこにあるのは実写化における“正しさ”の具体例だ。 それでいて脇を固めるキーキャラクターには信長に山本耕史、秀吉に八嶋智人と、時代劇作品でも存在感を示すキャストを配置することで、ファンタジー的な『刀剣乱舞』の世界観・キャラクター性と“正統派時代劇的なもの”、“それらしか見ていない客”とのバランスをとっている。

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