Dec 27, 2018 column

2018年アニメ映画総括「アニメ映画に泣かされた1年」

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2018年に劇場でかかったアニメ作品を「全て」見たという人は、ヘビーなアニメファンはおろか、アニメ業界にいる人達にもいないのではないか。それほどに今年の上映本数も多かった。いわゆる“映画作品”だけではなく、ビデオ作品の劇場上映やシリーズ作品を劇場で先行上映するといったイベント上映がとにかく増えたこともあり、アニメ情報サイトなどで上映作品の一覧を見ると、その数は60本近くにものぼる。印象に残った作品や出来事も多い年だった。

2月に公開された『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、人気アニメ脚本家・岡田麿里の初監督作品として注目をされた。「歳をとらず普通の社会の中で生きられない母と、彼女に育てられた血の繋がらない息子」という特殊な設定。それを成立させるファンタジー世界の寓話として紡いだドラマは、“母と子”という普遍的なテーマを誰も見たことがないものとして描き出した。見る者の感情や心を掻きむしってくる作品でありながら、見終えたときにこれほど気持ちの良い“掻きむしられかた”は無かったとさえ感じた。単純に「今年見た映画で一番泣いたのは?」と聞かれたら僕は即答でこの作品になる(もはや「泣いた」とかいうレベルではなく上映中に口を押さえて見ていたくらいだった。でないと声を出して泣いてしまいそうだったのだ)。 帰宅後に母から「おかえり」と言われただけで泣いてしまったという感想も見かけたが、その気持ちはとてもわかる。当たり前であると思っていたことが違って感じられるようになる映画だった。

4月公開の『リズと青い鳥』も大きな話題をさらった。高校の吹奏楽部を舞台に、親友同士であった2人の少女の青春期と思春期の複雑で微妙な感情が、卒業が迫る中で交差しすれ違い触れあっていく様を描き出した青春ドラマ。見事としか言いようのない映像の積み重ねはセンシティブな空気を見る側に伝え、アニメファンのみならず映画ファンからも高い評価を得た作品。アニメ・実写といった垣根を越え、近年の邦画における青春映画の中でもトップクラスの名作だろう。女性客には自身の高校時代を思い出し、大きな共感を感じた人も多かったようだ。

夏の『ペンギン・ハイウェイ』は森見登美彦による小説のアニメ化。同氏作品のアニメ化はこれまでの『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』のいずれもが面白かったこともあり期待していたのだが、想像以上に一筋縄ではいかない作品であり大いに惹きつけられた。謎のペンギンが現れた街を舞台に、小学生の男の子と彼の憧れるお姉さんがその怪現象を探る一夏の冒険物。ちょっとだけマセた感じのするジュブナイル展開に身悶えしていると、さらには「あ、これってSFだったんだ!」と驚く展開が待っている。子供の観客にはストレートに面白い冒険物語。大人が見ると甘酸っぱさやキュンとくる切なさもある。1月にレンタルも開始されるので「夏が舞台のジュブナイル」というキーワードにピンと感じる人は見て損はないだろう。