感心したのは、それらの新規部分の多くに設計レベルである程度の共有性(規格化)を持たせたことで、例えば“ランドセル”と呼ばれるMSのバックパックと本体の接続が、近年の新作では同じ形状となっている物が多いことだ。このため接続部分が同じ形状であれば「アレとソレのランドセルを組み替える」ということが何の追加工作もナシに可能となる。当然なことに思えるが、かつては製品ごとに形状が異なっているのが基本で、「コレにアレをくっつけたい」と思ったら工作に要求されるスキルはそれなりに必要だった。それがどのような初心者にも可能になったのだ。
他社製品を持ち出せば、コトブキヤの『フレームアームズ』がやはりこういうコンセプトで設計されている模型だが、『フレームアームズ』は元々がこういった組み替え遊びを前提にした企画製品。 対してガンプラは「作品に出てくるソレを再現した状態が完成系」であり、こういった組み替えはいわば非公式だった。それをついに公式化したのだ。買い手側からすれば同じに見えるギミックだが、リリース側にしてみればコンセプトや発想を大幅に切り替えている。それが画期的と感じた部分だ。
既存キットのリニューアル(再利用)だけではない。現実ではキットは出ていないガンプラを使ったカスタムガンプラも作品に登場することもあり、まずは『ビルドシリーズ』仕様のキットが新規に開発・発売され、そこから設定を逆行して本来の登場作品設定に戻したアレのキットがついに発売される…ということもある。 たとえば『ビルドファイターズ』の新規金型製品『グフR35』をベースに、『ガンダム』1作目に登場したグフのリニューアルキットが生まれた。あらゆる部分にムダがなく、「見事な企画開発」だと思う理由だ。技術と企画が、課題への1つの解として形になっている。
さて、キット(製品)はある。組み立ても簡単になりプレイバリューも高まった。残る課題は「仕上げのストレス」だ。実際のところこの要素はかなり難題で、模型ファンを増やしたいと願い啓蒙を続けてきたモデラー諸氏にとっても積年の悩みであった部分だ。
あらかじめ色わけがされているガンプラであっても、「ここだけは色を塗りたい」であるとか「組み替えた後のアレとコレのパーツの色を整えたい」であるとか思うことは多い。ほんのちょっと色を塗るだけでも愛着は大きく変わるし、自分の“作品”へと変化をする。 ガンプラ市場においては以前より塗料メーカーのGSIクレオスが、ガンプラを製造するバンダイホビー事業部の企画商品としてガンプラのプラスチック色に合わせた『ガンダムマーカー』という製品を発売している。名前の通りペン型のマーカーで子供にも扱え、便利な代物だ。ただ、便利なのだが、マーカーなのでちょっと広い面積はキレイに塗れないという弱点があった。ここに『ビルドダイバーズ』製品のリリース開始と同時期に画期的な物が登場した。それが「ガンダムマーカーエアブラシシステム」だ。
既存のガンダムマーカーを挿すだけでエアブラシ塗装ができるという物で、発表されたときに驚いた。「実際に使い物になるのだろうか?」と思っていたのだが、購入した知人をふくめネットの反応などを見聞きしていると、かなり使えるとのことだ。いくつかの店で塗装サンプルなども見たが、かなり良さげだ。「よし、決めた!買うか!」とサイフを握りしめ立ち上がったものの、現在絶賛バカ売れ中どころか初回出荷分は発売と同時にほぼ完売の有様で、入手が出来るのはしばらく後になりそうだ・・・。