Apr 12, 2018 column

ビルド系ガンプラに見る、企画開発の巧みな戦略と市場をリードする発想の転換

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従来のエアブラシはキレイに塗装が出来るが、いろいろな意味でハードルが高いと言われてきた。本体が高いし、なにより使った後の用具の手入れの手間のストレスがとにかく大きい。しなければ次の色は使えないし、放置しておけば中で塗料が固まってしまう。しかも手入れに結構シンナーを使うため室内が臭くなる…。正直、かなり面倒くさい。

マーカーを使うこの製品ではその手入れのストレスが無い。使われているのはアルコール系の塗料であるためラッカー塗料などに比べたら有害な成分は少ないし、イヤな溶剤臭も無い。簡易であることもだが、それ以上にこの安全性の高さは家族と暮らしていたり(とりわけ小さいお子さんがいるような人)や、アパート住まいでシンナーなど使えない人にとってもかなり有用だ。当然ながらガンプラ以外の模型の塗装にも使えるので、模型塗装そのものにおいての革命的な製品かもしれない。(ただしガンダムマーカーを使うために、同マーカーで発売されていない色を塗ることは当然出来ないのだが)

こういったガンプラ市場の動きを見ていて、考えさせられてしまうのは「鉄板商売」「シェアが大きい」というのはどういうことだろう?ということだ。ガンプラをめぐる最近の製品からはそのことへ1つのアンサーが感じられる。それはプラモという市場の話だけではない。あらゆる分野の市場に対してだ。

従来のファンに依存しているだけではいずれ頭打ちになっていく。どうやって新規層、それも若年層を取り込んでいくのか?という課題への挑戦を忘れてしまった分野は、それが今はどれだけ大きな人気を誇っていても、何かの拍子に簡単に足元が壊れていく。 “たかがガンプラ”と思われるようなこういう製品の数々や企画力から、発想の転換というものが垣間見えることもまた面白いのだ。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)