何しろ、東京ではU局アニメとしてはあれだけの大ヒット話題作であった『魔法少女リリカルなのは』も地上波では見ることができなかった。美少女アニメ雑誌『メガミマガジン』では毎号のように大々的に特集が組まれていたにもかかわらず本編が見られない。『機動戦士ガンダム』の頃の「気になるが、ウチの地方では放送していない」という嘆きは東京のアニメファンから出る言葉となった。 U局アニメの増加はそれまでの都市部集中型から一転してドーナツ化現象をもたらした。東京こそがアニメ視聴の過疎地域になってしまったのだ。 都内でも地域によっては隣接する千葉・埼玉・神奈川のUHF局で放送されるものを見ることができた人もいるが、都心部ではこれも不可能で、なおかつ放送のデジタル移行後はエリア外受信が不可能になったために完全に見れなくなった。
MXでのアニメ放送が増え始めたのは00年代中盤過ぎからで、東京でこの『リリカルなのは』シリーズがリアルタイム視聴できるようになったのは07年のシリーズ3作目『魔法少女リリカルなのは StrikerS』からになる。しかしやっと『なのは』をリアルタイムで見ることができるようになったものの、この第3シリーズでは、なのはもフェイトも成長して大人になっていたため、今度は別のショックを受けたファンは多い。
現在ではU局アニメはBSなどで、キー局アニメも多少の遅れはあれど系列BSでの放送がされることも多いため、ほぼ全国のどこででも新作アニメを大きくても数日の差で見ることができるようになった。
加えて、この2年ほどで一気に本格化したネット配信の台頭だ。
キー局、系列局、U局、BS…。そのいずれもで見ることができない作品でも、たいていはどこかの配信サービスに乗っている。最近では作品の公式サイトで配信情報もアナウンスしている作品が多い。もはやアニメにとって配信はなくてはならない物になりつつある。 目に見える変化としてはアニメ雑誌での作品の取り上げ方にもある。『リリカルなのは』放送時には同作のアニメ誌での取り上げは前記の『メガミマガジン』を除けば少なかった。不思議に感じたが、全国区の作品ではないことが大きかったようだ。00年代前半ではまだU局アニメは全国区作品という扱いではなかったのだ。今では大きく変わり、アニメ誌の記事を占める作品の多くはこのU局で放送されている作品で、配信のみの作品も記事として取り上げられている。
日本動画協会が公開している「アニメ産業レポート2016」という統計データがある。
http://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei
これを見ると「アニメ産業市場(ユーザーが支払った金額を推定した広義のアニメ市場)の推移」での「配信」のウェイトは2002年は2億円。この02年というのは『バンダイチャンネル』がサービスを開始した年だ。2008年に100億を突破。2012年に272億円といきなり急成長。この12年というのはおそらく12年7月よりNTTドコモがdマーケット内で開始した「アニメストア」の影響が大きいのではないかと思う。 これが15年には437億円。海外販売も5,833億円と爆発的に増えているが、これも海外でのネット配信事業者による日本アニメの爆買いが大きい。