Mar 26, 2017 column

映画『ひるね姫』“モノづくり寓話”に隠された神山監督のメッセージとは?

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作中だけではない。パンフレットのプロダクションノートを読むと、この作品で従来通りの紙で作業された原画は3割ほど。その他の作画作業の多くはデジタルで行ったとある。加速化するデジタル化は今のアニメ制作や映画制作において大きな課題の1つだ。完全デジタルでの作画に対応できるスタッフが少ないことなどがネックとなったそうだが、この映画の制作そのものも、次なる時代のモノ作りにどう向き合っていくか?という、作品と同じテーマに向きあっていたのだ。

終映直後には「これまでの神山作品と大きく違う」と感じたのだが、考えれば考えるほど、自分のそのファーストインプレッションは間違っていたと思うようになった。『ひるね姫』は監督が社会をどう見ていて、何を感じているのか、が強く描かれた、間違いなく“神山印”の映画だ。

神山監督が伝えたかったのは、「モノを作ることにおいて大事なこと」を次世代に語っていく作品だった。映画は現実と夢を交差させることで、この意図を演出的に構成しているのだろう。 そう考えたとき、この映画は宮崎駿監督が『風立ちぬ』で投げかけたことへの、神山健治監督なりのアンサーなのではないのか?とも思う。

映画やアニメといった夢が観客に与えてくれるものは、必ずしも即効性の有ることばかりではない。見た人たちが、上の世代が語ったこの寝物語をどう思い、彼・彼女らの中でどう残っていくのか。遅効性が重要な映画だってある。 もし、いま見たときには戸惑いの感想をもったとしても、何年か後にその人たちがモノ作りの中で何かの行き詰まりを感じたとき。この映画の中で繰り返される“ある言葉”は、その人の背中をちょっと押してくれることになるだろうから。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)

関連書籍

『小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』神山健治 (著) / KADOKAWA

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