Feb 28, 2022 column

『ナイル殺人事件』1978年版に続いて2度目の映画化にケネス・ブラナーはどう挑んだか?

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名探偵ポアロと映画の関係

エルキュール・ポアロを生んだアガサ・クリスティは、戯曲を書き下ろすことも少なくなかったうえに、作品自体がビジュアルを喚起する作品が多かったこともあり、1930年代から映画化も相次いだ。代表作の『そして誰もいなくなった』など、名匠ルネ・クレール監督版に始まり、5回にわたって映画化されている。

もっとも、クリスティ自身は自作の映画化には不満が大きかったと言われており、唯一、気に入っていたのはビリー・ワイルダー監督が『検察側の証人』を映画化した名作『情婦』(1957)だけだったが、晩年、そこにもう1本だけお気に入りの映画が加わっている。シドニー・ルメット監督の『オリエント急行殺人事件』(1974)である。

ポアロものの映画化は、1931年の『アリバイ』(原作は『アクロイド殺し』)が最初だが、『オリエント急行〜』の成功によって、1970年代後半から80年代にかけて、相次いで映像化されることになった。『オリエント急行〜』の続編として企画されたのが、「ナイルに死す」を原作とした『ナイル殺人事件』(1978)である。

前作でアカデミー主演男優賞にもノミネートされたポアロ役のアルバート・フィニーは、エジプトロケが中心となる続編への出演を渋り、新たなポアロにピーター・ユスティノフが選ばれた(以降、映画・テレビ合わせて6作でポアロを演じている)。

エジプトで2か月にわたってロケが行われた『ナイル〜』は、ピラミッド、ナイル川をはじめとする風光明媚な紀行映画としての魅力と、ミア・ファロー、ジェーン・バーキン、ベティ・デイヴィスら新旧のスターが脇を固めた豪華キャストを眺めるのも楽しく、名キャメラマンのジャック・カーディフの華麗な撮影が異国情緒を際立たせ、女優たちを美しく映し出す。ニーノ・ロータの壮大でエキゾチズムあふれる音楽も忘れがたく、ジョン・ギラーミン監督の職人的手腕が発揮された一級の娯楽映画だった。