Jun 18, 2022 column

芦田愛菜&宮本信子の“57歳差”シスターフッド映画 BL愛が人生を豊かにする『メタモルフォーゼの縁側』

A A
SHARE

シスターフッドが注目を集める理由とは?

本作を撮った狩山俊輔監督と脚本の岡田惠和は、長瀬智也と麻生久美子が共演した土曜ドラマ『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)のコンビでもある。『泣くな、はらちゃん』は地味なヒロイン(麻生久美子)が、趣味で描いた漫画のキャラクター・はらちゃん(長瀬智也)たちに励まされ、人生が変わっていくファンタジックな物語だった。劇中漫画がヒロインの人生を大きく左右するという点では、本作と2013年に放映された『泣くな、はらちゃん』は似ているものがある。

ベテラン脚本家の岡田惠和は、キャリアの初期に内田春菊原作の『南くんの恋人』(テレビ朝日系)や萩尾望都原作の『イグアナの娘』(テレビ朝日系)などの漫画原作ものが評価され、NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』や『ひよっこ』が幅広い層から人気を博した。ハートウォーミングな作風で知られる脚本家だ。

思えば『ちゅらさん』では沖縄で暮らすおばぁ(平良とみ)が、『ひよっこ』ではあかね荘の大家さん(白石加代子)が、まだ社会経験の少ない若い主人公を温かく見守っていた。岡田惠和の作品では、シスターフッドという言葉が流行するずっと前から、年の差シスターフッドものが描かれてきたと言えるかもしれない。

シスターフッドという言葉には、女同士の友情に加え、男性社会で疎外されがちだった女性たちが手を差し伸べ合い、支え合うというジェンダー的なニュアンスも含まれれいる。シスターフッド映画が近年注目されているのには、そんな社会的背景もある。仕事で忙しいシングルマザーと2人暮らしのうららは、将来について相談できる大人が周囲にまったくいない状況だった。うららにとって、雪がどれだけ大切な存在だったのかが分かる。

雪にしても、書道教室に通う生徒たちがいるとはいえ、「独居老人」のひとりである。先生と生徒ではない、うららとの友達同士の関係が雪には心地よい。横社会である学校、縦社会である家庭とは異なる、雪の自宅の縁側というほんわかした空間がとても愛おしく思えてくる。

自分はひとりぼっちじゃない。そのことに気づいたうららは、それまで自分を固くガードしてきた陰キャラという重たい鎧を脱ぎ捨て、陰キャラとも陽キャラとも異なる新しいキャラに転生することになる。初めての創作漫画『遠くから来た人』の執筆は、生まれ変わるために必要な苦しみだったのだ。美しい蝶が羽化する様子を観客も一緒になって見守るような、そんな温かさを『メタモルフォーゼの縁側』は感じさせる。

文/長野辰次

作品情報
映画『メタモルフォーゼの縁側』

監督:狩山俊輔

原作:鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」(KADOKAWA) 

脚本:岡田惠和

出演:芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平(なにわ男子)、古川琴音、生田智子、光石研、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗  

配給:日活

©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

2022年6月17日(金) 全国公開

公式サイト metamor-movie.jp