Sep 08, 2023 column

『禁じられた遊び』にみる洋画ホラーとにっかつロマンポルノへの憧憬

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本日、新たなジャパニーズホラーが劇場公開となった。橋本環奈と重岡大毅(ジャニーズWEST)がダブル主演を務める『禁じられた遊び』がそれだ。監督は『リング』(1998)で世界的大ヒットを記録し、近年もジャニーズの亀梨和也(KAT-TUN)主演の『事故物件 怖い間取り』(2020)が高い評価を受け、ホラー、サスペンスなどあらゆる怖さを追求してきた中田秀夫が務める。

本作の評判は、すでに海外へも伝播し、40カ国以上から上映・配信オファーが相次いでいるという。そこまでの魅力の根源を紐解くと、『禁じられた遊び』には、洋画ホラーへの憧れとにっかつロマンポルノへのリスペクトがあるからではないかと思い至った。

名作ホラー映画のオマージュ

本作は、清水カルマによる同名小説が原作。念願のマイホームを手に入れた重岡が演じる伊原直人は、妻の美雪(ファーストサマーウイカ)、息子の春翔(正垣湊都)と幸せに暮らしていた。しかしある日、妻と息子が交通事故に遭い、妻は即死、意識不明の重体となるが一命を取り留める。

「トカゲの尻尾を埋めて、エロイムエッサイムと呪文を唱えると、トカゲが生えてくる」

父が何の気なしについた嘘を信じた息子は、亡き母の体の一部を家の庭に埋めるのだった。時同じくして、伊原直人の元同僚、橋本環奈演じる倉沢比呂子の周囲で、次々と不気味なことが起き始める。

このあらすじは、スティーブン・キング原作の伝説的ホラー映画『ペット・セメタリー』(1989)を思い出させる。この洋画ホラーは、田舎町にある墓地に猫の死骸を埋めると凶暴化して生き返った、という怪奇現象を知っていた男が、愛する息子の遺体をその墓地に埋める話だ。

洋画ホラーのエッセンスは、他にもある。

交通事故にあった息子は、16時44分に死亡が確認されたが、突然の落雷の後、蘇生する。つまり午後4時44分、不吉な数字”444”が並んだときに復活するのだ。1976年製作された、獣の数字”666”が印象的だった『オーメン』味を感じる。

そのほか、庭に蠢く物体を退治するために、ガーデニングの柵を使った杭打ちであったり、手斧を振り上げたりするシーンは、十字架による磔刑、ジェイソンによる凶行にも見える。退治されようとするモンスターからの目線で、煽られた構図が多用されていることから、これが”撮りたかった”ものであることは間違いないだろう。

にっかつロマンポルノへのリスペクト

本作で新たなホラーアイコンとして登場したのが、ファーストサマーウイカが、4時間超かけ特殊メイクを施し熱演した、怨霊モンスター・美雪だ。彼女の全身にはバラの刺青のような模様が入っている。その妖艶な全裸姿は、1971年から1988年に日活が打ち出した、成人映画レーベル「にっかつロマンポルノ」を想起させる。

10分に1回情事があり、70分ほどで収まる作品であれば、基本的に自由に撮影できた「にっかつロマンポルノ」には、芸術性のあるアートハウス系の映画として国内外で評価される作品も多くある。才能ある若い女優や監督が集まりやすい環境だった、このロマンポルノに憧れて、日活に入社したのが、本作の監督を務めた中田秀夫である。

にっかつロマンポルノ生誕45周年のリブートプロジェクトとして製作された『ホワイトリリー』の監督を務めた彼は、あるインタビューでこう答えている。

「女性の情念の激しさを描く映画の系譜にあるのが、にっかつロマンポルノだと思った」

ホラー映画ではあるが、本作『禁じられた遊び』は、女の情念の激しさを描いた映画という意味では同様である。

また、中田はこうも答えている。

「僕がロマンポルノを撮るということは原点回帰」

彼は、日活時代、助監督だったため、ロマンポルノを撮ることができなかった。監督作品を手がけたい彼は、Vシネマの『女教師日記・禁じられた性』(1995)で監督デビューを果たす。その後、『女優霊』(1996)を手がけ、注目を浴び、1998年に『リング』が大ヒット。現在ではジャパニーズホラーの代表の1人と目されている。

シソンヌ長谷川が演じたインチキくさいサイコメトラー坊主、MEGUMIのシスター姿に、Vシネテイストを感じるのは、監督が本作に密かに込めた原点回帰の想いなのでは?とは考えすぎだろうか。

劇中の台詞に「この世に霊は存在しない。すべては生霊である」というようなものがある。
本作でいえば、にっかつロマンポルノのような女の情念がそれに当たるだろう。その想いを最恐モンスターとして具現化し、洋画ホラーのような分かりやすさで演出した。

女の、人妻の情念による恐怖は、上映開始30分から始まる。怪奇現象の根源には想いの強さにある。本作『禁じられた遊び』は、人間の恐怖の源を知ることができる。

文 / 小倉靖史

作品情報
映画『禁じられた遊び』

伊原直人が息子・春翔に冗談半分で教えた小さな嘘。「ねえパパ、トカゲの尻尾を埋めたらトカゲが生えてくるの?」 「そうだよ。でも、ある呪文を唱えないとダメなんだ」仲睦まじい2人を妻・美雪が見守っていた。幸せな生活を送る伊原家に、ある日、不幸な事故の報せが届く‥‥。聞き覚えのある名前を耳にした映像ディレクター・倉沢比呂子はかつての同僚・伊原直人を思い出す。時を同じくして周囲では次々と不気味な出来事が起き始め、その根源を探るため比呂子は伊原家へと向かう。そこで目撃したのは、母親にもう一度会いたい一心で呪文を唱える春翔と、それに呼応するかのようにうごめく土の山だった‥‥。

監督:中田秀夫

原作:清水カルマ「禁じられた遊び」(ディスカヴァー文庫)

出演:橋本環奈、重岡大毅(ジャニーズWEST)、堀田真由、倉悠貴、正垣湊都、猪塚健太、新納慎也 、MEGUMI、清水ミチコ、長谷川 忍(シソンヌ)、ファーストサマーウイカ

配給:東映

©2023映画『禁じられた遊び』製作委員会

公開中

公式サイト kinjirareta-asobi.jp