“実写化不可能”なプロジェクト
「デスノート」「るろうに剣心」「銀魂」「キングダム」「BLEACH」「約束のネバーランド」。間違いなくジャンプ系漫画の実写映画は、日本の映画産業において大きな役割を果たしてきた。なかでも『デスノート the Last name』(2006)は52億円、『るろうに剣心 京都大火編』(2014)は52.2億円、『キングダム』(2019) は57.3億円、『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)は 51.6億円と、興行収入50億円超えの大ヒット作品も数多い。(※映連 統計データより)
また2023年は、ジャンプ原作ドラマのビッグ・タイトルがNetflixで2本リリースされた年でもあった。8月31日には、実写版ドラマ「ONE PIECE」が配信開始。1話あたり26億円という破格の製作費が話題になったが、週間グローバルTOP10で1位、世界93カ国でTOP10入りと予想を上回る大ヒットを記録。12月14日から配信された「幽☆遊☆白書」も、初登場で週間グローバルTOP10で2位、非英語シリーズで1位を獲得。今やジャンプ系原作映画/ドラマは、国内のみならずグローバルな人気を博している。
そして今年1月19日(金)より、いよいよ『ゴールデンカムイ』が公開される。原作は、野田サトルが2014年から2022年にかけて週刊ヤングジャンプに連載した、“和風闇鍋ウエスタン”。日露戦争終結直後の北海道を舞台に、不死身と称された退役軍人・杉元佐一とアイヌの少女アシㇼパが、莫大な金塊のありかを巡って大冒険を繰り広げる。既刊全31巻で累計発売部数は2,700万部(2024年1月時点)を超える、大ヒット・コミックだ。
“実写化不可能”という表現は映画化にあたって頻繁に使われる常套句だが、『ゴールデンカムイ』もその例外ではない。“実写化不可能”は言い過ぎだとしても、“実写化困難”であることは間違いないだろう。埋蔵金争奪の冒険サバイバル・バトルアクションを描くにあたって、氷点下の雪原でのアクションや、巨大ヒグマとの死闘は避けては通れない。
超ハードな撮影だったことで有名な『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)ばりの過酷ロケになることは確実。ちなみに主演のレオナルド・ディカプリオは、気温マイナス27度の環境に耐え、クマに襲われたり、バイソンの生レバーを食べたり、骨折するほどの格闘をしたりの大熱演。その苦労が報われて、ディカプリオはアカデミー主演男優賞に輝いた。そう、映画撮影にとって寒さは大敵なのである。
さらに付言するならば、『ゴールデンカムイ』の映画化にはもうひとつ困難なミッションがある。ヒグマの一撃で兵士の顔の皮が剥がれたり、指を噛みちぎったりするグロ描写があったかと思えば、「私にうんこを食わせる気か!」「うんこじゃねえよ味噌だよ!」という杉元&アシㇼパのヒザカックンなやりとりもあったりして、残虐からホッコリの振り幅が異様に大きいのだ。漫画というアートフォームならば、1コマごとにテンションが激変しても、絵のタッチを変えることによって読者にトーンを伝えられるため、さほど違和感は生まれない。だが、実写となると問題は別だ。
『ゴールデンカムイ』スタッフは、そんなミッション・インポッシブルなプロジェクトに挑んだのだ。