Feb 05, 2022 column

世代を超えて愛される名作は、新世代へ受け継がれる『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

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私は幽霊を恐れないーーI ain’t afraid of no ghost.

観る人によって、続編としながら「リブートっぽさもある」とか、「いや、そもそもこの展開は、ずるい」という声もあるだろう。エンドロールに”ハロルドに捧ぐ”とあるように、監督ジェイソン・ライトマンは、『ゴーストバスターズ』『ゴーストバスターズ2』と脚本・出演したイゴン・スペングラー博士ことハロルド・ライミスが2014年に亡くなったことから本作の着想を得ている。本作はオリジナル版、それに関わった人たち、すべてに向けたラブレターだ。リスペクトと書いて愛と読む。うん、つまりテーマ曲にあるように「幽霊なんて怖くない」。今は亡き先達へ愛を捧げているのだ。

ジェイソン・ライトマンは、10代で妊娠した主人公を描いた『JUNO/ジュノ』、青春時代の輝きを取り戻そうとする女性を描いた『ヤング≒アダルト』と家族をテーマにした作品を手掛けてきた背景がある。父親のアイヴァン・ライトマンが友情と起業の話として描いたゴーストバスターズシリーズを、息子の彼は愛と家族の話で紡いだ。

Netflixで配信中の『ボクらを作った映画たち』によると、『ゴーストバスターズ』『ゴーストバスターズ2』で脚本・出演したダン・エイクロイドはリアルに超常現象好き。彼の曽祖父は心霊研究家で降霊会を主催しており、両親も超常現象好きで「幽霊研究は家業だ」と言う。ここにも家族の物語がある。またオリジナル版は『ブルース・ブラザーズ』でダン・エイクロイドの盟友であったジョン・ベルーシと再び共演予定だったが、彼は薬物中毒により死亡。代わりにビル・マーレイがキャスティングされ、脚本を直していたハロルド・ライミスが出演したいと申し出た。80年代の『ゴーストバスターズ』も友人の死を越えて制作されていたのだ。その他、著作権問題で「ゴースト・ブレイカーズ」になるかもしれなかったなど、かなりの綱渡りの状況のなか制作され、初代ゴーストバスターズが生まれた。まさに奇跡的。

余談だが、監督を担当した『恋はデジャ・ブ』(1993)を機に、ビル・マーレイとは仲違いしていたハロルド・ライミス。リアル・イゴンの娘ことヴァイオレット・ライミス・スティールによると、父が病気で静養していると、住所を知らないビル・マーレイが地元警察に行き、「ハロルドの家に連れていけ」と警察を引き連れ見舞いに来て、死を直前に仲直りできたらしい。ゴーストバスターズの友情物語は潰えなかったのだ。

この世からいなくなっても受け継がれる意志がある。前の世代から継承するということは大事だということに気づかせてくれる。「『SLAM DUNK』を知らないのは、ただの勉強不足」とか、言わないで次の世代に繋げないとダメだよね。

また、普段は気づき辛いけれど、家族関係なんて一番身近な奇跡だ。お子さんがいる方は、息子さん、娘さんを連れ立って映画館に行ってほしい。お父さん、お母さん、たまには泣いてもいいんだ。家族そろって笑って泣いて観られる映画なんて最高だ。来年の冬あたり、昔みたいにテレビで流してくれるといいな。新しい世代にファンが生まれて、何度観ても楽しい名作が受け継がれる。そうやって永遠にゴーストバスターズが、みんなの心に居続けられますように。

文 / 小倉靖史

作品情報
映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

都会での生活が苦しく、母と兄の3人で田舎町へと引っ越してきたフィービー。この街では、30年間にわたり原因不明の地震が頻発していた。祖父が遺した古びた屋敷で暮らし始めたフィービーは、リビングの床にほどこされた奇妙な仕掛けに気づく。さらに屋敷を探るフィービーが祖父の地下研究室で目にしたのは、見たことのないハイテク装備の数々だった。祖父がかつてゴーストだらけのニューヨークを救った《ゴーストバスターズ》の一員だったことを知ったフィービー。しかし、床下でみつけた〈ゴーストトラップ〉と呼ばれる装置を誤って開封してしまう。それをきっかけに不気味な緑色の光が解き放たれ、街ではさらなる異変が起こり始める。

監督:ジェイソン・ライトマン

出演:マッケナ・グレイス、ポール・ラッド、フィン・ウルフハード、キャリー・クーン、ローガン・キム、セレステ・オコナー

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

公開中

公式サイト ghostbusters.jp/