May 29, 2019 column

カンヌ映画祭レポート〜アート映画の殿堂でも“ジャンル映画”がブーム

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第72回カンヌ国際映画祭が終了しました。 映画祭は、世界中で毎日どこかで開催されているほどあまたあるのですが、その中でもベネチアとベルリンと並ぶ、世界三大映画祭のひとつがカンヌです。

実質的には、中でももっともプレスティジアスな(威信がある)のがカンヌです。次いで、鼻の差でベネチア、1馬身空けてベルリンといった順位でしょうか。

ファッションの世界でのパリコレと一緒で、大きな見本市のような場所で、半年後から1年後の映画界のトレンドが読めるワケです。

実際に、アカデミー賞を始めとする賞レースにもカンヌ発の作品がズラリと並びます。例えば、今年のアカデミー賞の外国語映画賞の最終ノミネート5本には、去年のカンヌでパルムドール(最高賞)を受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』、監督賞を受賞したポーランドのパヴェウ・パブリコフスキの『COLD WAR  あの歌、2つの心』、審査員賞を受賞したレバノンのナディーン・ラバキーの『存在のない子供たち』の3本が選出されています。

多くの映画監督、とくにアート系の映画監督はカンヌ出品をひとつの基軸にしているともいえます。

ということで、今年のカンヌ映画祭。コンペティション部門には、そうしたハイプロファイルな監督の21の作品が選出されました。

コンペティション部門にも目立つ“ジャンル映画”

オープニングを飾ったのは、ジム・ジャームッシュ監督の『The Dead Don’t Die』(2020年、日本公開予定)。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84年)でNYインディーズ映画の雄といわれ、カンヌでも常連。日本では『パターソン』がヒットしたことで、若者層にもファンが増えました。

『The Dead Don’t Die』は、ジャームッシュ初のゾンビ映画。小さな田舎町で、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴェニー演じる警官が墓から湧き上がってくるゾンビと闘う、というオーソドックスなストーリーですが、全編に渡ってオフビートな笑いとウィットに富んだ会話が展開されるジャームッシュらしい作品。フランスではカンヌでのプレミア直後に公開され、大ヒット中です。

Abbot Genser / Focus Features © 2019 Image Eleven Productions, Inc.

ジャームッシュがゾンビ映画?と思う方も多いと思いますが、このところの映画界は、空前のホラーブーム。カンヌにもゾンビ映画が登場するのも“必然”といえるかもしれません。

ちなみに、併設部門「監督週間」では、ホラー映画界の巨匠ジョン・カーペンターのトリビュートが行われるなどホラー祭り!

映画界では、こうしたホラーやサスペンス、アクションなどを“ジャンル映画”と呼びますが、かつてはジャンル映画はB級の娯楽映画としてカンヌのような“アートの殿堂”とは縁が薄いものでした。が、ここ10年、映画界では除々にその存在感が増してきて、今年もコンペには多くのジャンル映画が選出されていました。

ちなみに、去年のアカデミー賞でギレルモ・デル・トロ監督のジャンル映画『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を受賞、また、作品賞候補にバリバリの低予算ホラー『ゲット・アウト』が選出されたことは、映画界におけるジャンル映画の地位が確立されたことを証明する歴史的な“事件”でした。

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