May 29, 2019 column

カンヌ映画祭レポート〜アート映画の殿堂でも“ジャンル映画”がブーム

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女性監督の活躍からも目が離せない

今年のカンヌは、ジャームッシュの他にペドロ・アルモドバル、ケン・ローチ、テレンス・マリック、アルノー・デプレシャン、マルコ・ベロッキオ、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌといった名匠たちの安定の上手さにも見応えがありましたが、この時勢を反映してか、女性監督の作品が気を吐きました。

コンペの21本中、女性監督の作品は4本。少なく感じるかもしれませんが、映画界における女性監督の数が4%と言われている現状を考えれば少ないとはいえません。実際に、この4作品の中から3作品が受賞しました。

パルムドールに次ぐグランプリを受賞したのは、セネガル系フランス人マティ・ディオプの『Atlantics』。脚本賞は、フランスのセリーヌ・シアマの『The Portraite de la jeune fille en feu』。また、英国のジェシカ・ハウスナーの『Little Joe』に主演したエミリー・ビーチャムが女優賞を受賞しました。

カンヌは、映画祭のオフィシャルスポンサーでもあるラグジェアリ−・グループ「Kering」と提携して、トークイベント「Momen In Motion」を開催するなど映画界における女性の地位の向上を応援する姿勢を示していますが、女性フィルムメーカーの受賞も年々増えている印象です。

最高賞パルムドールは韓国の『Parasite』

さて、今年の最高賞となるパルムドール。韓国の気鋭ポン・ジュノの『Parasite』(2020年公開予定)が受賞しました。

誰も定職を持っていない、ある貧しい家族が、長男が裕福な家の家庭教師になったことをきっかけに起こる奇想天外なドラマ。コメディ、アクション、ミステリーといったジャンル映画の語り口で、韓国の社会問題でもある“格差”の闇を語る、風刺ドラマです。

ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

映画監督の層の厚さではアジア一の韓国ですが、その韓国の映画史の中で初めてカンヌの頂点を極めた作品が、ジャンル映画だったことは、現在の映画界を象徴しているといえるでしょう。

また、受賞に関わらず、年末から年明けのアカデミー賞までの映画賞レースでは、この21本の中からたくさんのノミネート、および受賞が出ることは必須。オフィシャルでの受賞はなく、カンヌ名物の「パルムドッグ」のみの受賞に終わったクエンティン・タランティーノ監督の話題作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(8月30日公開)も、主演のレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットの俳優賞を含め、賞レースに絡んできそうな気配です。

文/立田敦子

立田 敦子

大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ国際映画祭やヴェネチア国際映画祭などにも毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

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