年頭から目を休める暇もない勢いで続く今年のアニメ映画ラッシュ。その中にあって最大の注目作と言える『天気の子』がついにそのベールを脱いだ。
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改めて書くまでもない。『君の名は。』の新海誠監督による新作長編。事前の試写会はいっさいナシという方針をとり、本作は公開まで全てが謎に包まれていた。そして公開早々から予想通りの大ヒットとなっている。
さて、ここからは少し内容について触れているので、そのことを承知いただきたい。(これから映画を見る予定の方はご注意いただきたい)
上映が終わるなり快感と同時に「えらいもんを見てしまった」とかなりの困惑を感じた。『君の名は。』はこれまでの新海作品の全てが入っている集大成だった。それが日本の歴代興行で記録を作るほどの大ヒット。だから、もっと『君の名は。』が受けた層にわかりやすい(同系統の)作品を出してくるのではないかと思っていた。だがその予想は良い意味で全くもって裏切られた。『君の名は。』は観客に対して誤読をさせないことに細心の注意を払っていた。対して『天気の子』は前作同様の誤読をさせないことは留意しつつも、どのような物語だと受け止めるのかについては観客に多くのボールを投げている。
この印象が明確になったのは数日がたったあたりだ。周囲の友人知人で見た人が増えるにつけ各々がSNSで感想を記していたのだが、それらを読んでいて驚いた。感想で「『○○』を思い出した」「『○○』のような何々だ」という例えが使われることは珍しくない。『○○』には映画・小説・マンガ・TVドラマ、フィクション・ノンフィクションの何かの作品名が入る。だが、その『○○』に入る作品がそれぞれであまりにも違うのだ。ジャンルから何から全く違う。文芸映画からホラー作品。古典からサブカルチャー。友人知人だけでなくネットで見知らぬ人の感想を見ていても同様でさらに困惑は増した。「え?なんで?」と思うそれらに、それぞれの人のそう感じた理由と感想が続く。これは映画の中で描かれているドラマのどの部分にその人が惹かれたのか?ということだが、それほどまでに『天気の子』は多くの物語を内包した、これまでのどの新海作品よりもユニークな構造を持っている。公開前に新海監督が語っていた「賛否が分かれる作品」というのは、おそらくそういう部分についてでもあるのかもしれない。ちなみに僕はアニメ『交響詩篇エウレカセブン』(05)と、高校生の頃に読んだサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を思い出していた。