Apr 02, 2018 column

堤幸彦監督による『ケイゾク』『SPEC』に続くSPECサーガ完結篇が新しいメディアParaviより配信開始!

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「テレビでなくパラビ」と、4月からサービスが開始された新しい配信メディアParaviは、TBS、日本経済新聞、テレビ東京、WOWOW、電通、博報堂が共同出資して、日本最大級の国内ドラマアーカイブを有し、新しいコンテンツを毎日配信するほか、様々なサービスを用意している。
なかでも目玉は、オリジナルドラマ「SPECサーガ完結篇『SICK’S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』」。

人類の進化の過程で誕生した特殊能力者・スペックホルダーによる犯罪を取り締まる日本のCIA的存在である内閣情報調査室特務事項専従係、通称「特務」に所属する御厨静琉(木村文乃)と高座宏世(松田翔太)のバディの活躍を描く。これまでTBSの地上波で放送してきた、堤幸彦監督のヒット作『ケイゾク』(99年)、『SPEC』(10年)に続くシリーズ最新作で、“ピンチョス配信”という、1〜2分の動画を毎日少しずつ配信し、1話の全貌がわかるのは、1ヶ月後くらいになるという画期的な試みを行う。4月1日に配信された各1、2分くらいの動画8本ほどを見ると、最初はあまりに細切れで一気に見たいとじれったく思うが、慣れてくると、いつの間にか、ちょっとずつ見ることを楽しんでいた。

配信開始の日、都内で、1話の試写と関係者による舞台挨拶が行われた。
これから1ヶ月ほどかけて毎日少しずつ配信されていく1話・1時間分を一気に見ることができる貴重なチャンスに、会場は満員。その内容は、1話分が配信完了されるまで明かさないよう促されたため、ここでは書けないが、スペクタクルシーンあり、アクションあり、謎あり、笑いあり、スタイリッシュな画面ありと、盛りだくさん。過去作『ケイゾク』『SPEC』を思わせる部分も随所に登場する。

冒頭、東京が炎上していく派手なシーンがあるが、堤監督は、これは物語が先に進んだときのもの(フラッシュフォワード)で、そこに至るまでが今後描かれていくと、舞台挨拶で説明した。
「これ(SPECサーガ)はライフワークで、いつ終わるか先が見えない。それがスリリングで面白い。私の命が尽きるのが早いか、『SICK‘S』が終わるのが早いか……」と笑わせながら、「今までで一番振り切ったものになった。地上波では自主規制することにも挑戦していこうと思っている」と語る堤と、99年『ケイゾク』からバディのように作品を生み出し続けているプロデューサーの植田博樹は「20年前の『ケイゾク』が僕のプロデューサー人生のはじまりで、今回は僕の集大成にしたいし、全力でお客さんに喜んでもらいたい」と意欲的だ。

御厨静琉役の木村文乃は、
「わけあって肌を見せない服を着て、猫背、内股、カバンの中に右手を入れているというエキセントリックさのうえ、三重人格くらいある人物ですが、いざ演じてみると、四重、五重人格くらいありそう。ハーバード大学を出て、IQ230もある設定なので、その場その場で違っていていいかなと思って演じています。クレージーなまでに頭のいい御厨が、熱血おバカの高座とどうやって行動を共にしていくのか楽しみ」と、相当変わり者の役を楽しんでいる様子。

高座宏世役の松田翔太は、
「高座は真っ直ぐで嘘がつけない男。ある事件がきっかけで警察を辞めて、どうしようかと思っていたところ、特務に誘われて、未知なる世界に入っていく。僕自身も高座と同じで、どうやって『SICK‘S』の特殊な世界に対応していくか試行錯誤しているところです。この役で自分を成長したいと思っています」と意欲を見せた。

劇中に出てくるカブトムシは、松田が哀川翔から譲り受けたものだとか。カブトムシについて長めのトークをして客席を沸かせた。木村と松田は、堤監督作『イニシエーション・ラブ』(15年)で共演していることもあって、息が合っている感じがする。

そしてもうひとり、大事な人物がいる。
御厨と高座の上司となる野々村光次郎役の竜雷太だ。今回の役は、『ケイゾク』『SPEC』に出ていた野々村光太郎の双子の弟。『SPEC』で殉職した兄に代わって、若者たちを導いていく。
「あえなく殉職した兄の無念をはらすため、ふたりの力を借りて最後までやり通したい。老骨に鞭打ってやらせていただきます」と決意を語った。
「心臓が息の根を止めるまで真実に向かってひた走れ」と『ケイゾク』から続いている名セリフを言って、『ケイゾク』『SPEC』ファンを喜ばせた竜は78歳。堤監督は62歳。
99年に『ケイゾク』がはじまって20年。先頭を走るメンバーが「心臓が息の根を止めるまで〜〜ひた走れ」がリアルに響く年齢になりながらも、木村と松田という若くフレッシュなキャストを交えて、新しい表現に挑んでいく姿は頼もしい。

試写と舞台挨拶のほか、劇中に出てくるDHS(ドスコイ引っ越しシャトル)という引っ越し業者によるラップのライブや、堤監督が見出したオーストラリア在住のアーティスト・Alisaが主題歌『walls』を披露した。

 

文・木俣冬

 

番組情報

 

SPECサーガ完結篇『SICK’S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』

原案:西荻弓絵
プロデュース:植田博樹
監督:堤幸彦
出演:木村文乃 松田翔太 竜雷太ほか
公式サイト:https://www.paravi.jp/feature/sicks_specsaga/

 

文・木俣冬

 

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。 ほか、ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。
初めて手がけた新書『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中!
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