Sep 20, 2026 interview

奈緒インタビュー 「絶対に役を固めない」現場で生まれる感情を信じて演じた刑事・薫の“影” 映画『シャドウワーク』

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親族やパートナーから暴力を受けた女性たちが身を寄せるシェルターと、ある女性刑事が捜査している不審死事件が交差していくサバイブサスペンス『シャドウワーク』が9月25日に公開されます。原作は第66回江戸川乱歩賞作家の佐野広実氏が2022年に発表した同名小説です。そんな原作を自身で脚本に変えて映画化したのは、『君は永遠にそいつらより若い』(2021)の𠮷野竜平監督。本作では吉岡里帆さんが夫から逃げ出したシェルターのメンバー【紀子】役を務め、奈緒さんがある事件を追う刑事【薫】に扮して、社会問題であるDVを題材に、2人の女性の物語が絡まっていくミステリーとしてスリリングな展開を味わえます。

それぞれの女性の心情も浮き上がってくる『シャドウワーク』で、重要な役割を果たす【薫】の内面を表情や歩き方で体現した奈緒さん。今回は、そんな奈緒さんに演技への思いや頼れる俳優仲間についても伺いました。

――映画の原作となる佐野広実氏の同名小説をすでに読まれていて、脚本を読んだそうですが読まれてどんな印象を持たれましたか。

読み終わった後にリアリティーもあって、今の社会問題にも通じるものをメタファーとして描かれている部分が大きい原作だと思いました。だから「映像化する」となった時には、そこのバランスが大変になってくるだろうし、特に大切な部分になるだろうなという印象を受けました。それから出来上がった脚本を読んで、新しいエッセンスを加えたとても良い台本が出来上がっていたので撮影が凄く楽しみになりました。

やっぱりそこは𠮷野監督ならではだと思います。前作の『君は永遠にそいつらより若い』でご一緒した時も原作に対してリスペクトを持って、新しいエッセンスを足す時も凄く原作を読み込んだ上で、原作で描いていることを映像で伝える為に必要なことを考える方なんです。分かりやすく言うと映像化することによって更に新しい視点を加える為にエッセンスを足すという方法をとられる監督なんです。本作でもそこが加えられていました。そのひとつに鳥が出てくるというシーンがあります。鳥というと空を飛んだりするから自由の象徴というイメージがあります。その小鳥が傷つけられる、自由に飛べなくなるというシーンを作品に足して、わざわざ説明しなくても登場人物の感情にリンクさせるところがとても映画的で余白があっていい作品だなと感じていました。

――あの描写は印象的で素晴らしかったです。𠮷野監督は俳優を信じているカメラワークと編集を大事にされている気がしました。何故ならセリフがあまり無いシーンでも俳優の表情をしっかりと映し出しています。特に【路子】役の美保純さんと奈緒さん演じる【薫】が、ファミリーレストランで話すシーンは圧巻でした。あのシーンはまぁまぁな長回しで、結構、ワンショットでの撮影が連なっていますよね。【薫】が自分の過去を語る重要なシーンですが、自分の辛い過去はそんな簡単に語れるものではなく、表現の仕方も難しいですよね。あのアプローチの仕方で、淡々と喋る。表情も少しずつ揺れていく。その演技にしびれました。

ありがとうございます。個人的には一番難しかったシーンです。台本上で読んでいた時も、ここは俳優部が頑張らないといけない部分だよな、と凄く思っていました。2つの物語が交差するところでもありますし、あそこがどういったシーンになるのかによってその後に自然と2つの物語が繋がっていけるかどうかだと思ったので、凄く緊張したシーンでした。現場でも緊張が続いていたので、“このままこの緊張を守ってやろう”みたいなアプローチでやりました。

――どんなトーンの声で話すのか、どんな表情でどんな感じでいくか、脚本を読んだ際、事前に考えられる方ですか。

実はまったく、演技プランみたいなものは考えていないんです。どちらかというと美保純さんとの繊細なやり取りをまっさらな状態で組めるように、フラットな状態でいたいという思いの方が強かったです。あのシーンは笑顔なんですけれど、美保さんとご一緒していく中で2人の中に壁があったり、その壁がちょっと取れそうになったり、そんな繊細な揺らぎがあったんです。そこを自分がなるべく決めたものではなく心でキャッチ出来たらいいなと思っていました。カメラも近いので緊張する空間ではあったのですが、やっぱり𠮷野組のスタッフさんとは旧知の仲というか、以前ご一緒したスタッフさんがほとんどだったので、安心感もあり皆さんを頼る感じでやれました(笑)。

――自分とは違うキャラクターを演じる上で大切にしていることはありますか。

毎回変わらないことで言うと、現場に行ったら自由に感じられるようにすることです。そこは凄く大事にしているところです。それこそ台詞を入れるというのはあくまで準備段階で実際にやってみないと分からない分、台詞を頭に入れる点で自分が思う100%に近いものにした時に凄く楽な気持ちで現場に居られるんです。何故なら台詞に頼らずにその場で起きたことを自然と汲み取れるようになるので。なるべく準備は“100%だ”と思うところまでやりますが、絶対に役を固めないということを毎回自分の中で心掛けています。自分の中で“固めそうだな”と思ったら自分で自分に厳しく注意をするようにしています(笑)。