Jun 12, 2025 interview

李相日 監督が語る 役者という生き物の壮絶な生き様を描いた『国宝』

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この世ならざる美しい顔を持つ立花喜久雄は、任侠の一門に生まれる。しかし抗争で父を亡くし、上方歌舞伎の名門の当主、花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界に飛び込む。そこで、半二郎の実の息子、生まれながらにして将来を約束された御曹司の俊介と出会う。ライバルとして互いに高め合い、芸に青春を捧げていくのだが、さまざまな出会い、そして別れが、二人の運命の歯車を大きく狂わせていくーー。

吉田修一が、自身で3年間、歌舞伎の黒衣を纏い楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた「国宝を、世界最高峰のスタッフ&キャストが集結し、映画化した。稀代の女形喜久雄を吉沢亮、俊介を横浜流星、その父であり名門当主・花井半二郎を渡辺謙がそれぞれ演じ、李相日監督がメガホンを執った。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『国宝』の李相日監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

国を超えて伝わった「役者」の魂

池ノ辺 今回『国宝』は、カンヌ国際映画祭の「監督週間」部門に出品されました。監督も現地に行かれたんですよね。反響はいかがでしたか?

 現地で皆さんに観てもらうまでは、劇中の歌舞伎のストーリーもよく知られていない中で、どういう受け止められ方をするんだろうと、ちょっと不安だったんです。でも、観終わった後の皆さんの反応を見る限り、核心的なものがちゃんと届いていると思いました。こちらが最も伝えたい部分、役者という生き物の壮絶な生き様、魂そのものが、ダイレクトに届いたという印象でした。

池ノ辺 会場では拍手が鳴り止まなかったと聞いています。上映後の取材でもかなりの方々が集まったようですね。

 あまりそういうことはないと現地の方に聞いていたのに、たくさんの方がロビーに集まってくれて、なかなかない感無量感でした。

池ノ辺 吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さんたちも、一緒に写っている写真も見ましたが、皆さんかっこよかったですね。

 (渡辺)謙さんにご一緒していただいたのは本当に心強かったですね。やはり現地での認知度も飛び抜けていて、普通に「ケン!」と声がかかるんですよ。だからこちらはちょっと大船に乗ったつもりで、背中も丸めず背筋を伸ばして歩くことができました(笑)。

池ノ辺 吉沢亮さんも横浜流星さんも、素敵な立ち姿でした。

李 彼らは、今一番上昇気流に乗っているという時期にあると思うんです。でもまだまだ経験していないことがたくさんある。どんな場所もどんな経験も今の彼らはどんどん吸収していきますから、そのタイミングであの場に立てたということは本当に良かったと思います。