レジェンド声優インタビュー
小山茉美[世界放浪編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんによる濃密トークをお送りするレジェンド声優インタビュー。今回は、80年代アニメ&洋画吹き替えで圧倒的な存在感を示していた小山茉美さんが登場! 「声優をなめていた」というデビュー直後の苦い失敗から、アニメファンに衝撃を与えた“空白の一年”、そして現在の活動について語っていただきました。
- 古川登志夫:
(以下、古川) -
今回のレジェンド声優インタビューは、80年代以降、多くの作品でヒロインを演じてきた名優・小山茉美さんにお越しいただいています。デビュー直後から引く手あまたで、当時は藤田淑子さん(「キテレツ大百科」キテレツ役など)か、小山茉美さんかというくらいの大人気だったんですよね。
- 小山茉美:
(以下、小山) -
藤田さんは別格。私は単に業界にあまり若手がいなかったからですよ。当時の若手女性声優はみんな忙しかったんです。
- 平野文:
(以下、平野) -
私は茉美ちゃんと同い年なんだけど、声優として活動し始めたのが少し遅かったので、実は大先輩なのよね。デビュー作になる「うる星やつら」(1981~1986年)が、毎週水曜日の19時30分からで、茉美ちゃんの出ていた「Dr.スランプ アラレちゃん」は19時からでしょ。こんなスター番組の後にやる番組の主役をやるのかって、とてもドキドキしていたのを覚えてますよ。
- 古川:
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当時のアラレちゃんは視聴率25%超えを連発するお化け番組だったからね(編集部注:最高視聴率は36.9%)。
- 平野:
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茉美ちゃんとは、何かのイベントの時に楽屋で初顔合わせしたんですけど、よろしくお願いしますって挨拶に行ったら「わかった、分からないことがあったら何でも聞いて」って。ああ、頼れる姉御ができた、って安心しちゃった(笑)
- 小山:
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えええっ、本当にそんなに偉そうなこと言ったの?(笑) 昔から生意気な小娘で……失礼いたしました。
- 平野:
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いえいえ(笑)、でも同い年とは全く思えないほどのオーラが出てて、本当に憧れていたんですよ。テレビを付けると、大抵の作品に出てたしね。
- 古川:
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「機動戦士ガンダム」「Dr.スランプ アラレちゃん」「魔法のプリンセス ミンキーモモ」……時代の節目に燦然と輝く象徴的な作品には必ず小山茉美が参加していたよね。海外ドラマでも引っ張りだこだったし。
- 平野:
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でも、そんな茉美ちゃんが、1980年代後半に突然、仕事を全部断って海外に行っちゃうのよね。今回はその辺りのお話が聞きたいわ。
- 小山:
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忘れもしない1989年の元旦の朝に、1人でぼーっと珈琲を飲みながら、今年の抱負を考えてたんですよ。前年も大晦日まで働いたし、このまま一生こまねずみのように働き続けるのかな、今年もそうなっちゃうのかな、って。そんなふうに悶々としていたら、急に「そうだ、旅に出よう!」って閃いちゃったのね。一所懸命に働くのも人生だけど、若いうちに海外に出て見聞を広めるのも素敵かも知れないって。
- 古川:
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疲れたから休むんじゃなくて、海外旅行に行こうと思ったきっかけは?
- 小山:
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たまたま、その前年にテレビ番組の収録でアマゾンまでロケに行ったんですよ。1~2週間のロケの後、私はサンパウロから東京に帰ったんだけど、撮影クルーはそのままペルーに入ったの。私は子供の頃からペルーのマチュ・ピチュに行くのが夢だったから、それが本当に羨ましくてね。それで、よし、今年は自分でペルーに行ってみようって(笑)。でも、ペルーってめちゃくちゃ遠いし、お金もかかるんです。
- 古川:
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当時は南米に行くためには何度もトランジットしないといけなかったからね。
- 小山:
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そう、だから1週間とかで帰ってくるんじゃもったいないじゃない? せっかくなら1ヶ月は滞在したい。でも、それだけ休むなら1ヶ月も3か月(1クール)も同じ事でしょ? さらに、1クール休むってことは、レギュラーの仕事ができないってことだから(編集部注:当時のアニメは2~4クール放送されるのが一般的だった)、半年も一年も同じ……だからこの際、1年間休んでペルーに行こうって思ったの。