Jul 02, 2017 interview

ONE PIECEのビッグ・マムはその昔、世界一周の航海に出た?声優・小山茉美ロングインタビュー後編

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古川

とにかく巧い人。技巧派でしたね。あの時代、藤田淑子さんと茉美ちゃんがツートップでしたから。男ながらにあんなふうになりたいって思ったもんですよ。

平野

私もそれは同感。大先輩の藤田淑子さんは華やかな世界をご存じなので、お声にもそのあたりのゴージャス感が感じられたんだけど、茉美ちゃんはそこに入っても全く違和感がないの。あとやっぱり演技よね。日本人と西洋人って声質が全然違うんだけど、茉美ちゃんには、海外の大人の女優さんの地声に近い引き出しを持ってる。それはアニメのヒロインの声とは全く違うものなのよね。

小山

アニメ的なかわいい声をあんまりやりたくなかったってのは確かにあったかも。私の場合、すごく恵まれていたのは、吹き替えをする女優さんがほとんど年上ばかりだったってこと。シャロン・ストーンも、シェリル・ラッドも、ゴールディ・ホーンもそう。自分より大人の女性を背伸びして演じることで、声質も自然に大人声になっていったのかも。

だからかな、今でも時々、お婆さんとか、年上の仕事がたくさんくるのよ。最近も「ONE PIECE」(1999年~放送中)で、ビッグ・マムって役をやらせてもらってるんだけど……。

古川

見た見た! いきなりミュージカルになるんだよね!!

小山

山みたいな大きな身体で、100人近く子供がいるとか、信じられない役なのよ。これも思わず「なんで私なんですか?」って聞いちゃった(笑)。

古川

ビッグ・マムは「四皇」の最後の1人なんだけど、他の3人が、池田秀一さん、有本鉄隆さん、玄田哲章さんという超ビッグネームだからね。そこと釣り合いが取れる存在となると、もう茉美ちゃんしかいないよ。

平野

私も、これまで幅広い役をこなしてきた茉美ちゃんだからこその起用だと思うわ。

古川

でも、ここまで幅広い役を演じ分けるのにどういう工夫をしているのかは気になるな~。

小山

今までの話でお分かりのように、私って行き当たりばったりで生きているものだから、その瞬間、絵を見て閃いたイメージで演じちゃってるんですよ。おまけにだいぶ天然入っちゃってるんで、正直、自分で分かっていない。計算ができないの。ね、文ちゃん(笑)。

平野

行き当たりばったり、はわかります(笑)。でも、あるマネージャーさんが「こういうのをセンスと言う言葉でまとめちゃいけないんだけど、そうとしか言えないよね」って言ってたのは本当だと思う。

古川

永井一郎さん(「サザエさん」磯野波平役など)は、キャラクターの絵を見ると、一瞬で自分の細胞が入れ替わるようにキャラクターの声になるって言ってましたね。

小山/平野

分かる!!

小山

本当に、“瞬間”なんですよ。計算して、この役をこういうふうにやってやろうではなく、もっととても感覚的。実は永井さんには新人時代に一度演技について相談したことがあるんですけど、そのときも「無になれ」とおっしゃられて。

古川

深いなぁ……。

小山

無ってどういうことなんですかってお聞きしたら、頭の中をカラッポにしなさい、それが集中するってことなんだよって。それまでの私は集中するって、ガチガチに力を入れていることだと思ったので、それは驚きでしたね。

古川

僕が似たようなことを聞いたときは「柳のように風に吹かれる、そういう演技をしなさい」って言われたな~。

 

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平野

デビュー当時、大きな挫折を経て、本気で声優を志した茉美ちゃんが、自分が一人前になったなって思えたのはいつ頃なの?