コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第199回
女優の篠原涼子が、3月10日に丸の内TOEI①で行われた、映画『北の桜守』の初日舞台挨拶に登壇した。
2005年公開の『北の零年』、2012年公開の『北のカナリアたち』に続き、雄大な北海道を舞台に壮大なスケールで人間模様を描く、“北の三部作”の最終章となった本作。 主演を務める吉永小百合(【江蓮てつ】役)にとっても、節目となる120本目の出演映画となり気合も十分。本作の宣伝期間中には、吉永のみで400媒体、全キャスト・監督を含めると500媒体もの取材を敢行し、全国キャンペーンにおける吉永の総移動距離に関しては、実に約8,900kmにも及んだ。これは、劇中で堺雅人演じる【江蓮修二郎】が18歳で網走を出て単身渡った、日本からロサンゼルスまでの距離と同じだという。
改めて吉永はキャンペーンを振り返りながら、北海道(札幌)ではインフルエンザにかかってしまった自分の代わりに堺がたくさんしゃべってくれたことに感謝すると、同様に、全国の方々に向けても感謝の言葉を述べていた。
吉永と親子を演じた堺は「親子の愛って色々な形があると思います。時にはきょうだいだったり、時には恋人だったり、時には同士みたいな姿もあるんだと感じました。吉永さんはシーン毎に本当に色々な顔をされていて、同じところが一つもなく、見つめ合うだけで引き込まれてしまう先輩でした」と、共演できたことを喜び楽しい時間だったと打ち明けると、「逆に私の方が堺さんの演技に見惚れてました(笑)」と笑顔で返す吉永だった。
そんな2人の親子愛に感銘を受けたのが、修二郎の妻【江蓮真理】役を務めた篠原。 劇中では、アメリカ育ちで慣れない日本での生活を始めた矢先、修二郎が連れてきた義母てつと突然一緒に暮らすことになったことへ不満を抱く妻を演じているが、実際は「この作品では色々な愛の形が描かれていますが、私も子どもがいる身として、吉永さんと堺さんが演じる親子の姿に、こういう親子の愛があるのも良いなって憧れの気持ちを抱きながら作品を観ていました」と、その関係性に羨望の眼差しを送っていたことを明かしていた。
“子ども”という面で言えば、『(吉永にとって)映画とは?』との質問に「子どもですね、やはり」と答えていた吉永は「篠原さんのように実際には私には子どもはいませんが、(初日の)今日は受験生を持つ母のような気持ちだったので、昨夜は眠れませんでした。これからも一本一本の作品を子どもだと思って大事にしていきたいと思います」と、優しく微笑みながら子ども(映画)への熱き思いを口にしていた。
そして最後に、吉永は「この映画は73年前の8月に、樺太、サハリン、そして北の海で実際に起こった事実に基づいて作られています。明日、3月11日で大震災から7年の月日が経ちますが、犠牲になられた方や今もなお苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。そんな中、このような作品を作って皆さんと挨拶できることに心から感謝しています。本当にありがとうございました」と締めくくると、観客からは温かい拍手が贈られていた。
舞台挨拶にはその他、滝田洋二郎監督、出演の岸部一徳、阿部寛、佐藤浩市が登壇した。
映画『北の桜守』(東映配給)
映画『北の桜守』(東映配給)は、戦中から戦後にかけて極寒の北海道で懸命に生き抜いた母と子の約30年にわたる軌跡を描いたヒューマン・ドラマで、女優・吉永小百合の120作目となる映画出演作にして、『北の零年』『北のカナリアたち』に続く「北の三部作」の最終章。
監督:滝田洋二郎 脚本:那須真知子 出演:吉永小百合、堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、高島礼子、永島敏行、安田顕、野間口徹、毎熊克哉、菅原大吉、螢雪次朗、笑福亭鶴瓶、中村雅俊、阿部寛、佐藤浩市 ほか