コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第37回
「まさか、マモーとマモで親友役ができるとは」
そう語るのは、人気声優の宮野真守。
“マモ”とは宮野の愛称(以下、宮野をマモと表記)だが、本作『SING/シング』でマモは、ヒツジの【エディ】の声を担当している。 自身の役についてマモは、「エディはボンボンで、働いたこともなく親のすねかじりという、情けないところもあるんですが、バスターの話を聞いてあげたりしてイイ奴なんですよ。後半、2人で頑張るシーンがあるんですが、そこはエディとしても前に進めるシーンというか、人生にやる気を見出す様は素敵だなと思いました」と語っていた。
その“話を聞いてあげた”、コアラの【バスター・ムーン】役を務めたのが、ウッチャンナンチャンの内村光良だ。
内村は「声優の仕事は初めてだったんですが、やっぱり凄いですねプロは。とても勉強になりました」と恐縮し、自身の歌唱シーンが映像で流されると、「恥ずかしいですね(笑)。これが全国に流れると聞いただけで手に汗かきます」と、苦笑いを浮かべていた。
そんな内村の姿を子どもの頃からテレビで観ていて、ずっと憧れを抱いていたマモ。それゆえ、今回の共演には他の誰よりも嬉しさを感じていたに違いない。
前述の“マモー”とは、内村が出演していたバラエティ番組『ウッチャンナンチャンの誰かがやらねば!』(1990年)、及び『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(同)のコントコーナーに登場したキャラクターで、タレントのちはる(ミモー)とともに「マモー・ミモー」として、当時お茶の間を賑わせていた。
マモーとマモ。 奇しくも憧れの人物との共通の名前を手に入れたマモだが、さらに、プライベートでも内村と繋がりがあったようで、マモは「実は、内村さんと同じトレーニングジムに通っていて、パーソナルトレーナーがジムの社長をしているんですが、その社長を介して内村さんの情報を教えてもらってるんです。どこを鍛えてるとか(笑)」と打ち明けると、内村も「僕も社長を介して、宮野君の情報を聞いてるんです(笑)」と返すなど、不思議な縁があることを明かしていた。
マモは、7歳の頃から「劇団ひまわり」に所属し、子役として活動していたが、18歳の時に初めて声優の仕事に携わったことで世界が広がり、そこから色々な経験ができたことが今の自分に繋がっていると語っていた。そして、その時が自分の人生が変わった瞬間でもあると。
昨今、“人口”が爆発的に増加した声優業界においても、マモの存在は確固たるものがあり、人気声優と呼ばれることに何の疑いもない。今や日本を代表する声優の一人となっている。
それを裏付けるように、2015年開催の「第28回東京国際映画祭」の初日に行われたレッドカーペットイベントでは、松山ケンイチ、オダギリジョー、佐藤浩市、北川景子、木村文乃、本田翼、そして、ハリウッドスターのヘレン・ミレンやヒラリー・スワンクら豪華俳優陣が登場する中、その日一番の歓声を浴びていたのがマモこと、宮野真守であった。
会場には「マモーーー!!」の声がこだましていた。 決して内村のことではない。
映画『SING/シング』(東宝東和配給)
映画『SING/シング』(東宝東和配給)は、人間世界とよく似た、動物だけが暮らす世界を舞台にした、『ミニオンズ』『ペット』などのヒット作を手掛ける、イルミネーション・スタジオによる長編アニメーション。
公式サイト http://sing-movie.jp/