Nov 02, 2023 column

「PLUTO」アトムの童がつなげる未来へのメッセージ

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「YAWARA!」「MASTER キートン」「20世紀少年」など数々のヒット作を生み出しているマンガ家・浦沢直樹による「PLUTO」。これは漫画の父と称される手塚治虫が生み出した「鉄腕アトム」の一篇「地上最大のロボット」をリメイクした作品だ。本作は、人間と高性能ロボットが完全に共生する近未来で起こるサスペンスドラマとして再構築。監修に手塚眞、プロデューサーに長崎尚志、協力・手塚プロダクションと、アトムが生まれたとされる2003年に連載が開始された一大プロジェクトであった。

多くのファンに映像化を待ち望まれていた作品がついに全8話のアニメーションとして、2023年10月26日にNetflixで独占配信された。アニメ版の全世界配信を機に、改めて「PLUTO」の魅力を確認したい。

なぜ「PLUTO」を描いたのか? 

2003年4月7日、この日はアトムの誕生日だ。4月7日は「鉄腕アトム」の連載開始日でもある。
これを記念にして「鉄腕アトム」のリメイク作品を雑誌連載し単行本にまとめる企画が立ち上がった。

プロデューサーの長崎尚志が、ある編集者からの「鉄腕アトム」リメイク依頼を断ったという浦沢直樹に、本当はやりたそうな感じを受けたので、再度焚き付けたことに始まる。おそらくこれが2002年冬ごろのこと。

この頃、長崎が「『火の鳥』のリメイクを浦沢さんでやりたい」と、手塚プロダクションに問い合わせていたが、ありえないと断られている。奇しくも「PLUTO」が全世界配信となった2023年に、「火の鳥 望郷編」をアニメ化した、『火の鳥 エデンの宙』がディズニープラスにて9月13日より全世界配信され、エンディングが異なる劇場版『火の鳥 エデンの花』が11月3日に公開される。

再度交渉となったのが、アトム誕生の10日前の2003年3月28日。「PLUTO」2巻のあとがきに、制作交渉の様子を監修の手塚眞によって語られている。

なぜ、このテーマであるか。それは浦沢直樹が最初に読んで感動したマンガが「鉄腕アトム/地上最大のロボット」であり、それこそ自身の創作の原点であることだった。
それを聞いた手塚眞が出した制作承諾の条件が、浦沢直樹の作品として浦沢直樹の絵柄で描くこと。


交渉時、プレゼンとして提出されたキャラクターは、手塚治虫の絵を踏襲したもので、アトムもゲジヒトも原作と同じ顔だったそうだ。それを見て「似顔絵じゃなくて、浦沢直樹自身のマンガが見たい」「オマージュを掲げてばかりで誰も戦いを挑んだものはいない」と手塚眞は再考を願い出た。「PLUTO」は「ビックコミックオリジナル」2004年10号から連載開始となった。アトム誕生から5カ月遅れたものの、手塚眞のダメ出しがなければ、いまの「PLUTO」は生まれてこなかっただろう。