Feb 23, 2019

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日本発コンテンツ実写化の道標となる?『アリータ』驚異の映像表現を生んだ裏側、OVA版の影響

死角なき映像表現が、ジャパン・コンテンツ実写映画化の齟齬を埋める

 

また作品を観る前に懸念されたアリータの大きな瞳だが、これはロドリゲスのアイディアではなく、キャメロンが2005年にまとめたアートワークの段階で起案されていたものだという。それはとりもなおさず原典に対するリスペクトの証であり、また“萌え”や“美少女キャラ”といった概念に対する欧米、ないしはハリウッド的なアプローチだと理解が及ぶ。ただ正直、筆者の印象としては、アリータは通常の人間キャラクターと絡むショットが多く、比較対象が居並ぶせいか最初はどうしても違和感が拭えない。

 

 

しかしストーリーが進むにつれ、アリータの境遇に対する感情移入が、その大きな瞳を愛らしいものと認識するようサポートをもたらす。そもそもこうしたことは、プリクラやパーツ補正アプリで顔像の画像加工に慣れ親しみ、日常的に“デカ目”のビジュアルに触れている若年層のほうが順応が早いのかもしれない。そう急がずとも、近いうちにフォトリアルな人間型CGキャラクターと、ピクサーやディズニーのアニメーションのようにカリカチュアされたCGキャラクターとの中間点あたりに、違和感を覚えることのない落としどころをハリウッドは見つけるだろう。

なによりも『アリータ』は『アバター』の視覚的達成をより先へと進めた作品として、16年間のタイムラグも決して無為ではなかったと言える。また『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(95年)の実写映画化である『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17年)のように、企画や製作の遅れから素材の新鮮味が薄れる心配もあったが、むしろ2019年という時代に映画化が成されたことで、アイアンシティと、同地の住民らが羨望する空中都市ザレムの設定は、アメリカの移民問題ならびに世界的に拡大傾向にある格差社会を暗示。奇しくも同時代にマッチした感がある。

 

原作者・木城ゆきとによる描き下ろしビジュアル

 

『アリータ』以降、日本のサブカルコンテンツの実写映画化はいくつも待機している。5月には怪獣王ゴジラだけでなく、キングギドラやラドン、モスラなどの東宝怪獣が登場する『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』があるし、同月公開の『名探偵ピカチュウ』(『ポケットモンスター』のハリウッド実写映画化)も楽しみな一本だ。またプリプロダクションの段階ではあるが、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(12~14年)のマーク・ウェブに監督が決定したと情報が伝えられた『君の名は。』や、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年)のタイカ・ワイティティ監督のもと企画が進行中の『AKIRA』なども控えている。こうした活況は、欧米での日本製サブカルコンテンツの関心そのものの深化、ならびに映画における中国・アジア市場の拡大など複合的な理由が挙げられるだろう。

だが先述したように、デジタル技術の発展によって表現が豊かになり、原典のイメージを萎縮させずに映像化できる厳然とした事実もまた、活況への推進を促す一つだといえるのではないだろうか。クリエイターの創意と熱量でジャパン・コンテンツを組み伏せる、というと言葉は乱暴だが、高みに乗じた死角なき映像表現は、ジャパン・コンテンツの実写映画化の齟齬を埋める強い手段なのだと実感させられる。アリータの勇姿を見れば、なおさらにそれを強く思うのだ。

文/尾崎一男

 

作品情報

 

『アリータ:バトル・エンジェル』

舞台は、“支配する者”と“支配される者”の二つの世界に分断された遠い未来。サイバー医師イドに瓦礫の中から拾われ、新しい身体で蘇ったサイボーグの少女は、記憶を失っていた。イドによって“アリータ”と名付けられた少女は、人々と心を通わせていくが、ある日自分の中に並外れた戦闘能力が備わっていることに気づいてしまう。彼女は、300年前の大戦中に失われたテクノロジーで作られた“最強兵器”だった――。アリータは自分の命の意味を見つけるため、そして大切な人たちを守るため、二つに分断された世界の秩序を揺るがす闘いへと身を投じていく。

原作:「銃夢」木城ゆきと
製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリほか
配給:20世紀フォックス映画
公開中
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
©Yukito Kishiro/Kodansha
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/

 

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原作紹介

 

「銃夢」木城ゆきと/講談社コミックプラス

1990年~95年に「ビジネスジャンプ」で連載され、アメリカ、スペイン、フランスなど世界17カ国で翻訳された。小説、アニメ、ゲームのマルチメディアでストーリーが展開され、世界的な人気を博している。2000年より続編「銃夢 LastOrder」を発表、2014年からは最終章「銃夢火星戦記」を「イブニング」で連載中。

 

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