レジェンド声優インタビュー 矢尾一樹[ONE PIECE 1人3役編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんによる濃密トークをお送りするレジェンド声優インタビュー。今回は、まるでロックスターのごとき風貌や、「やってやるぜ!」という名セリフで、80年代アニメ業界で、オンリーワンの存在感を発揮していた矢尾一樹さんにご登場いただきました。『超獣機神ダンクーガ』『機動戦士ガンダムZZ』そして、『ONE PIECE』……。今日まで続く、矢尾さんの俳優・声優道とは?
海賊からオカマ、そしてハードボイルドヒーローへ
- 平野文: (以下、平野)
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矢尾さんは役者になりたくてこの業界に入ってきたということもあり、「基礎」がしっかりしているわよね。『ONE PIECE』(1999年~)で、あんなにたくさんの役を演じ分けられているのも、その辺りが理由なのかしら?(編集部注:矢尾さんは『ONE PIECE』において、催眠術を駆使する海賊ジャンゴ、オカマの拳法家ボン・クレー、麦わらの一味の船大工フランキーの3役を兼任)
- 古川登志夫: (以下、古川)
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1つの作品で、重要な役をいくつも兼任するってのはすごいよね。そんなのほかの作品では聞いたことがない。
- 矢尾一樹: (以下、矢尾)
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いやいや、俺が一番ビックリしてますよ(笑)。最初の役(ジャンゴ)は普通にキャスティングされたんだけど、出番が終わった後に行われたスタッフのパーティで、原作の尾田栄一郎に「おい、ジャンゴは死んでないよな。また出てくるよな?」って脅しをかけたのが効いたのかな?
- 平野:
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原作者に向かってなんてことを!(笑)
- 矢尾:
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でも、そのおかげで、ジャンゴが退場した後も、原作のトビラ絵とかにはちょこちょこ登場させてもらえたんですよね。いやあ、脅してみるもんだなぁって。
- 古川:
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尾田っち(尾田栄一郎先生の愛称)と、矢尾ちゃんは本当に仲いいよね。「栄一郎」って呼ばせてるの、矢尾ちゃんだけだからね。
- 矢尾:
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また、ちょうどその頃、ジャンプアニメのツアーで漫画家と一緒に日本中を回るという仕事の総合MCをやっていて(ジャンプ・スーパーアニメツアー2002)、そこに栄一郎も参加していたものだから、よし、俺がお前に夜の世界を教えてやろうって(笑)。それで全国のオカマバーに連れて行ってやったらカマバッカ王国なんてのが出てきちゃった。いや、初めてニューハーフを見た時の栄一郎の反応は面白かったですよ。「矢尾さん! この人はどっちですか!? 男ですか? 女ですか?」ってびびりまくってましたから。「こいつはまだ付いてる」「こっちはもう工事済み」って丁寧に教えてやりました。
- 古川:
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……これ、記事にしていいのかなあ(笑)。
- 矢尾:
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わはは……でも、ボン・クレーの声を俺がやることになったのも、その流れなんじゃないですか?(笑)。
- 平野:
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え? じゃあ、ボン・クレーのモデルは矢尾さんなの?
- 矢尾:
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いやいや、本人から聞いたわけじゃないけど、ボン・クレーのモデルは別の人です。福岡で栄一郎と一緒に行ったオカマバーにあんな感じの子がいたんですよ。綺麗どころじゃないけど、すごく元気な子がいて、俺は彼(彼女?)がボン・クレーのモデルなんじゃないのかって思っています。
- 平野:
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じゃあ、矢尾さんをモデルにしたキャラクターはいないの?
- 矢尾:
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それが、中盤から麦わらの一味に加わる船大工のフランキーですね。これには、「矢尾一樹を船に乗せろ」ってリクエストがプロデューサーからあったみたいですよ。
- 古川:
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なんと、そうだっんだ…。でも、なんで?
- 矢尾:
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麦わらの一味の座長はルフィ役の田中真弓さんじゃないですか。でも、女座長のグループって、ともすると周りがイエスマンになってしまいがちなんです。プロデューサーとしてはそこに(本当の)暴れん坊を入れたかったんですって!何故なら麦わらの一味は海賊だから(笑)そう云う座組みは長く続くんだそうです。
- 平野:
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なるほど。