May 25, 2017 interview

『美しい星』を撮るために映画監督になった!?吉田大八監督が独自の世界観を語る

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──では、「otoCoto」恒例の最後の質問です。吉田監督の愛読書を教えてください。

蜷川幸雄さんの書かれた本を何冊か持っているんですが、その中でも「演出術」という一冊を、3年ごとくらいに読み返しています。30代の小劇場時代から「世界のニナガワ」と呼ばれるようになっていくあたりまでに蜷川さんが発表してきた各作品の演出意図だとか、その作品の舞台裏なども書かれている本です。戯曲との葛藤、作品の出来そのものに対する自信や不安、新しい俳優たちとの出会いを通じた発見などがすごく生々しくて、読み返す度に印象に残る箇所が変わります。読みながらアンダーラインを引いたり、付箋を貼ったりするんですが、毎回違う気づきがありますね。この先も何度も読むと思います。

──演劇にそれほど興味がない人が読んでも大丈夫でしょうか?

蜷川さんの舞台を観たことのない人でも面白いと思います。あれだけ世界的な演出家でも、毎回プレッシャーで押し潰されそうになっていたんだと分かると、ちょっと安心できる。結局、どれだけ準備をしていてもし足りないし、現場に行けば想像を上回る辛い目にあうことになる。何年やっても、何歳になっても楽にはなれないんだなということを思い知るだけでも、とても価値のある本だと思います(笑)。

 

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取材・文/長野辰次
撮影/吉井明

 

プロフィール

 

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吉田大八(よしだ・だいはち)

1963年生まれ、鹿児島県出身。CMディレクターとして国内外の広告賞を受賞する。本谷有希子の小説を原作にした『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待され話題となる。実在の結婚詐欺師を主人公にした『クヒオ大佐』(09年)、西原理恵子原作コミックの実写化『パーマネント野ばら』(10年)を経て、朝井リョウの小説を映画化した『桐島、部活やめるってよ』(12年)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞受賞。真面目な女性銀行員による横領事件を描いた『紙の月』(14年)で第38回日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。山上たつひこ&いがらしみきお原作コミックの映画化『羊の木』が2018年に公開予定。舞台での演出作に本谷有希子原作の『ぬるい毒』(13年)の他、5月19日〜6月11日に東京芸術劇場シアターウエストにて自身のオリジナル作品『クヒオ大佐の妻』が上演される。

 

レビュー

 

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イラストレーターなのか、作家なのか、それとも俳優なのか。様々な分野で独特な才能を発揮しているリリー・フランキーだが、彼ほどつかみどころのない人物もいない。映像化は難しいとされていた三島由紀夫の小説『美しい星』の主人公・大杉重一郎は、リリー・フランキーだからこそ演じられたハマリ役だろう。原作の重一郎は定職には就いていない高等遊民だったが、1960年代から現代へと時代設定を変えた映画版の重一郎はまるで当たらないことで評判のお天気キャスターに。ニュースショーのオンエア後はアシスタントとの火遊びで忙しかった重一郎だが、ある夜UFOと遭遇し、自分は火星人であり、絶滅の危機にある地球人類を救わなくてはいけないという使命感に駆られる。リリーが重一郎役を熱演すればするほど、重一郎の空回り感が増し、客席からは笑いが起きることになる。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)での監督デビュー以降、誰の視点に立つかで世界がまるで違って見えてくる独特な世界観で作品を撮り続けてきた吉田大八監督ならではの渾身の変化球作として仕上がった。哀愁と驚きと感動がない交ぜになった、かつてない味わいのラストシーンまでしっかり見届けたい。

映画『美しい星』

原作:三島由紀夫「美しい星」(新潮文庫刊)
脚本:吉田大八、甲斐聖太郎 
監督:吉田大八
音楽:渡邊琢磨
撮影:近藤龍人
出演:リリー・フランキー 亀梨和也 橋本愛 中嶋朋子 佐々木蔵之介
製作:「美しい星」製作委員会
配給:ギャガ 
2017年5月26日(金)より全国ロードショー
(c)2017 「美しい星」製作委員会
公式サイト:http://gaga.ne.jp/hoshi/

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原作紹介

 

「美しい星」三島由紀夫/新潮文庫

「日本空飛ぶ円盤研究会」に入会し、UFOの観測に熱中していたという意外な一面も持っていた“昭和の文豪”三島由紀夫。そんな三島が37歳のときに発表したのが『美しい星』。埼玉県飯能市で暮らす大杉家の人々が次々と宇宙人として覚醒していくという異色ストーリーとなっている。当時、旧ソ連(現ロシア)を中心とする共産国側と米国をはじめとする自由主義側とは冷戦状態にあり、核戦争による人類滅亡の恐怖を宇宙的な視点から描いた斬新な野心作だった。狐につままれたような奇妙な読後感が残る小説だが、人類を滅亡から救おうと尽力する大杉家の家長・重一郎が自宅の応接間で「白鳥座」の未知なる惑星から来た宇宙人3人組と激論を交わすシーンは天才作家ならではの才気に満ち溢れている。重一郎が挙げる「人類を滅ぼすには惜しい5つの美点」は今読み直して、ハッとさせられる。

■三島由紀夫関連本はこちら
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-吉田大八監督の愛読書

『演出術』蜷川幸雄 長谷部浩

“世界のニナガワ”と呼ばれた演劇界の鬼才・蜷川幸雄を、演劇評論家の長谷部浩が2年半にわたってロングインタビューを重ねたもの。演出家デビューを果たした『真情あふるる軽薄さ』から、本場ロンドンでも好評を博したシェークスピア劇『マクベス』まで、蜷川が演出した主要な舞台の数々を蜷川自身の口で語らせている。“サスペンス映画の神様”ヒッチコック監督を若き日のトリフォー監督がインタビューした映画界のバイブル『映画術』の舞台版を思わせる内容だ。木村拓哉が出演した『盲導犬』では胃潰瘍に苦しんだことや、蜷川の代名詞ともなっていた灰皿投げをやめた理由などが赤裸々に語られている。

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