May 25, 2017 interview

『美しい星』を撮るために映画監督になった!?吉田大八監督が独自の世界観を語る

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レイヤー化された世界。『美しい星』は吉田ワールドの総決算!

 

──吉田監督の作品は『桐島、部活やめるってよ』をはじめ、デビュー作の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、実在の結婚詐欺師を主人公にした『クヒオ大佐』(09年)、真面目な主婦が破滅しながら輝きを放つ『紙の月』(14年)など、どの作品もレイヤー化された世界観で描かれていることが非常に印象的です。どのレイヤーから眺めるかによって、世界はまったく違って見えてくる。原作者はそれぞれ別人なのに、独特なひとつの世界観で統一されていますね。

「レイヤー」という言葉を、最近自分でもよく使うなと思ってたところです(笑)。「このシーンで、この人物はなぜこういうセリフを言うのか?」みたいなことを尋ねられると、「このレイヤーでは」なんて説明したりしています。どうも僕は、ひとりの人間の中に一本きちんとした筋が通っているという感覚に馴染めないようです。その都度いちばん前にあるレイヤーによって、その人の立ち振る舞いが変わるというほうが僕にはしっくりくる。そのことに最近ようやく自分で気がつきはじめました。『美しい星』で映画は6本目になるんですが、こういう世界観で映画を撮るようになった理由のひとつに、映画監督になる以前から「美しい星」という小説を想い続けてきたことの影響が実は大きいのかも知れません。もし僕の作るものに何か共通した感覚があるんだとしたら、その嗜好・傾向の大もとに、「美しい星」があるんでしょうね。だからあらためて「美しい星」と向き合い、その映画を作れて、これでひとつなにかが終わっちゃったような、なんとなく寂しい感じもします(笑)。

 

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──映画監督として第1ステージをクリアし、次のステージへ向かうことになる?

次に何が残ってるのかはまだ分からなくて、ちょっと心配です(笑)。そういう意味では、『美しい星』はひとつの総決算というか、ここでいったん、自分の中でなにか決着がついてしまったような気持ちになっています。

──映画『美しい星』は一般人の視点から見れば、自分たちのことを宇宙人だと主張する頭のおかしな一家の残念な物語ですが、別の視点から見ると地球の危機を救おうと全力を尽くした重一郎の肉体は滅びるものの魂は救済され、またバラバラだった大杉家は最後の最後でひとつにまとまるハッピーエンドの物語でもある。

そうですね。レイヤーによってはそういう風に見ることができると思います(笑)。自分が求める純度で映画が完成したことが、自分のことながら「すごい!」と思いますし、作らせた人たちはもっとすごい(笑)。

 

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吉田監督の世界観に大きな影響を与えた作家とは?

 

──この世界は絶対的なものではない、相対的で危ういものだという吉田監督作品の独自の世界観ですが、どのようにして生まれたのか気になります。やはり少年期の環境でしょうか? 

別に特殊な環境で育ったわけではないです(笑)。多分、子どもの頃から読んでいた漫画や小説、それにもう少し年齢を重ねてから触れた音楽、映画、演劇といったものからの影響が大きいと思います。僕は1963年の生まれですが、僕が少年時代を過ごした70年代って、既成のものをぶっ壊してやろうという風潮が強かったように思います。本当に世界を変革しようという政治的なエネルギーは60年代の方が熱かったんでしょうが、その熱がサブカルチャーの分野へと移っていったのが70年代だったと思うんです。無邪気に「少年マガジン」などを読んでるうちに、いつの間にか多大な影響を受けているという。

──70年代ですと、赤塚不二夫の人気漫画『天才バカボン』では過激なメタフィクションギャグが繰り広げられていました。

ああいう、前提になる世界自体をひっくり返してしまうようなギャグ漫画が当たり前のように少年漫画誌で連載されてましたからね。子どもだったので、アバンギャルドという意識もなく、普通に読んで笑っていた。赤塚不二夫さんもそうだし、永井豪さんもすごかった。今でも永井豪さんの「ハレンチ学園」の第1部のクライマックスの「ハレンチ大戦争」がどんなにすごかったかを若い人に話したりするんですが、だいたいポカーンとされます(笑)。

 

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──「ハレンチ大戦争」はまさに漫画界のハルマゲドンでした。吉田監督が実写版『ハレンチ学園』を撮る日を楽しみにしています(笑)。

ははは。でも本当にね、若い頃に読んだ漫画や小説は自分の血肉になっているなぁと思いますよ。

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