May 25, 2017

インタビュー

『美しい星』を撮るために映画監督になった!?吉田大八監督が独自の世界観を語る

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ノーベル文学賞の候補に挙がるなど文学界に大きな足跡を残す一方、UFOを熱心に観測していたことでも知られる三島由紀夫。常人には計り知れない視野を持った天才作家が唯一のSF小説として1962年に発表したのが「美しい星」だ。ある日突然、宇宙人であることに目覚めた一家が地球の危機を救おうと奮闘する、コメディともシリアスとも判別できない奇妙な味わいの小説である。映像化困難なこの小説を、リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛ら人気キャストを擁して見事に映画化してみせたのは、『桐島、部活やめるってよ』(12年)で階層化した世界を鮮やかに描き分けた吉田大八監督。現代社会をレイヤー化して捉える鋭い視点は本作でも健在。吉田監督の言葉から、映画『美しい星』の魅力を紐解いてみたい。

 

──三島由紀夫の小説は「仮面の告白」「憂国」など、どれも衝撃作・問題作ばかりですが、その中でも「美しい星」は異色中の異色作。吉田監督は原作のどこに魅了されたのでしょうか?

まだ大学生だった20代の頃に初めて読んだんです。三島さんの小説を読むのは「美しい星」がほぼ初めてで、体系的に読んでるわけではなかったのであまり異色作という意識はありませんでした(笑)。確かに普通のSF小説かといえば違うような気がするし、では純文学かというとブッ飛びすぎている。その、どこにも属していない感覚が、すごく面白かった。当時の僕の気分にぴったりとハマったんです。

──吉田監督は早稲田大学の映画サークルで自主映画を撮っていたんですよね。その頃から自分の手で映画化しようと思った?

読み終えて、「まだ映画にはなっていないんだな」とまず思いました。そして「これが映画になるとしたら、どういう映画になるんだろう」と。その想像はすごく楽しくて、だからその「映画」に、いつか関われたらいいな、とも思いました。現実味の乏しい、若者にありがちな夢だったわけですが(笑)。自分が映画監督という職業を意識したきっかけのひとつかもしれません。

 

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様々な巡り合わせによって「美しい星」は映画化された

 

──構想30年にして、ついに映画化。よく実現できましたねぇ。

構想30年(笑)!確かに小説を読んで30年経ちましたが、もちろん「美しい星」のことだけ考え続けてたわけじゃありません(笑)。でも、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)でデビューして、その後何本か映画を撮るあいだに、「撮りたい作品は?」と尋ねられると、「美しい星」と折に触れて答えていました。そしてそのうち、実現しないこと自体に慣れていきました(笑)。ところが、今回は不思議なことに急に前へと進み出したんです。逆に内心焦ったんですが、自分が言い出した企画だし、引っ込みがつかなくなってしまいました(笑)。

──映画の企画が動き出すのには、時代の動きとシンクロする部分があるかと思います。地球の危機を訴える大杉家の物語が、リアリティーを感じさせる世相になってきたということなんでしょうか?

どうなんでしょうか。確かに、キューバ危機(1962年)などが起こって、核戦争の恐怖がリアルになっていった時代に原作は書かれています。僕は子どもの頃に「ノストラダムスの大予言」や「日本沈没」の洗礼と刷り込みを受けた世代で、そうした世界終末みたいなイメージが自分の奥底に染みついているのは否定できないし、実際、僕が「美しい星」を初めて読んで衝撃を受けたのも、チェルノブイリ原発事故(1986年)が起きた頃でした。そして2011年には東日本大震災と福島第一原発事故があったわけで、そうした危機感を肌で感じる機会が増えているということは当然関係あるでしょうね。もうひとつのタイミングとして、『美しい星』を撮った2016年の時点で、僕とリリーさんと、リリーさんが演じた大杉重一郎の原作上の設定年齢が、みな同じ52歳だったということもあります。そのことは、映画化にとって意味のある巡り合わせだと思えました。啓示、なんて言うと大げさですけど(笑)

 

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──そして『美しい星』の劇場公開を控え、北朝鮮の核ミサイル問題が注目されるリアルな状況に。

映画が製作されたり、公開されたりするタイミングって不思議なことが重なりますよね。
僕はどちらかというと、現実の生々しさと映画は適切な距離を取るべきだと思うほうなのですが、これからもそういう状況が日常的に起きていくのかも知れませんね。

──奇妙な味わいの原作をうまく実写化できた要因のひとつに主人公・大杉重一郎を演じたリリー・フランキーの妙演・熱演が挙げられそうですね。

リリーさんの存在は今回の映画化に欠かせないものでした。『美しい星』はずっとやりたかった企画でしたが、実際に誰を主演にするかについて、具体的なアイディアが浮かんだことはなかったんです。ところが今回、企画が動き出して、リリーさんの名前が挙がった瞬間、「あっ、重一郎がいた!」と。僕は「美しい星」における主人公の魅力は、どこにも属さない強さというか身軽さ、自在さみたいなものだと感じていて、それは僕がリリーさんのキャラクター自体に感じている魅力とぴたりと合ったんですよね。そしてリリーさんに声を掛けてみると、三島由紀夫の愛読者だった。リリーさんの出演が決まってはじめて、「本当に映画になるんだな」という手応えを感じられましたね。

 

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──重一郎がUFOを呼ぶ、あの奇天烈なポーズはどなたが考えたんでしょうか?

振付師の方にお願いして、10パターンほど用意してもらいました。その中から選んだものを、さらにリリーさんがアレンジして、ああいう不思議なポーズに仕上がったんです(笑)。

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