心に残る映画、園監督が体験した生死の境界
――思い出の映画について語っていただければと思います。初めて映画館で観た映画を覚えていますか？
園 初めて観た映画ねぇ…。東宝の怪獣映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』（66年）の最後のほうを映画館で観た覚えはあるけど。でも、初めて観た映画だったかどうかはわからないなぁ。『俺たちに明日はない』（67年）は名画座で観た記憶がある。
椎名 初めて観た映画ではありませんが、若いころに観て印象に残っているのはアラン・パーカー監督の『ミッドナイト・エクスプレス』（78年）あたりかな。自分の若さや将来への不安とかとシンクロするような内容でしたね。ショーン・ペンの初監督作『インディアン・ランナー』（91年）も印象に残っています。あとはやっぱり定番ですが、『ゴッドファーザー』（72年）。
――俳優を目指すきっかけになった映画はありますか？
椎名 初めて映画館のオールナイト上映に行き、そこで観たのが金子正次さんの主演映画でした。
園 『竜二』（83年）だね。
椎名 そうです！ 『竜二』を観て、「俳優になろう」と決意したわけではありませんが、主演の金子さんが脚本も書いて、しかも映画が公開された直後に亡くなった。そのことでもより関心が高まりましたし、アウトローたちの世界を描いた作品への憧れみたいなものも感じましたね。家族の姿を描いた普遍的なおもしろさもある作品でもあった。心の琴線に触れた映画として忘れられませんね。
園 俺の場合、子どものころから映画はいろいろ観ていたし、監督の名前も知っていたけど、自分が監督になるなんて考えてなかった。たまたま監督になってしまった。劇中で真之介が演じているシンと同じで、成り行きで監督になってしまった（笑）。
――園監督は2019年2月に心筋梗塞で緊急入院したことがニュースになりました。その後の体調はいかがでしょう？
園 今回の編集作業が大変だったんですが、いまはもう大丈夫。（ニコラス・ケイジ主演の）新作映画の準備を進めているところです。でも、救急車で運ばれた時は心肺機能が一時停止しました。死が近づいた瞬間は気持ちよかった。意識が宇宙まで飛んで、天の川が見えましたよ。AEDの電気ショックで死の淵から蘇ったんです。
椎名 電気ショックで！？ まるで映画の1シーンのようですね。
――椎名さんはこれまでに怖い目に遭ったことは？
椎名 まさに今回の撮影現場ですよ。こんなに怖かった現場はほかにはありません（笑）。
取材・文／長野辰次
撮影／三橋優美子
椎名桔平 ヘアメイク／遠藤真稀子（UM）
スタイリスト／中川原寛（CaNN）
1961年、愛知県生まれ。1986年、8ミリ映画『俺は園子温だ！』がPFF（ぴあフィルムフェスティバル）に入選。翌年、『男の花道』でグランプリを受賞。『自殺サークル』（02年）や『紀子の食卓』（06年）を経て、『愛のむきだし』（09年）でブレイク。主な監督作に『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『ヒミズ』（11年）、『新宿スワン』（15年）、『アンチポルノ』（17年）など。ニコラス・ケイジ主演のハリウッド映画『Prisoners of the Ghostland（原題）』の撮影が年内に控えている。
1964年、三重県生まれ。石井隆監督の『ヌードの夜』（93年）で注目を集め、同じく石井監督の『夜がまた来る』（94年）や『GONIN』（95年）にも出演。『化粧師 KEWAISHI』（02年）、『クイール』（04年）、『アンフェア the movie』（07年）、『レイン・フォール／雨の牙』（09年）、『アウトレイジ』（10年）など多くの作品に出演している。園監督とは『新宿スワンII』（17年）以来となる2度目のタッグ。
1995年、上京したばかりのシン（満島真之介）は、ジェイ（YOUNG DAIS）とフカミ（長谷川大）に声をかけられ自主映画制作に参加。ジェイたちの知人・妙子（日南響子）と美津子（鎌滝えり）に出演を依頼する。引きこもりとなっていた美津子に村田（椎名桔平）から電話が掛かってきたのは、世間が連続殺人事件に震撼していたころ。村田は「10年前に借りた50円を返したい」と美津子を呼び出し、巧みな話術とオーバーな愛情表現で彼女の心を奪っていく。だが、村田は冷酷な天性の詐欺師だった。姉も村田に騙されていた妙子によって彼の本性を知ったシンたちは、村田を主人公にした映画を撮り始める。やがて村田は、美津子の父・茂（でんでん）や母・アズミ（真飛聖）をも巻き込み、事態は思わぬ方向へ転がり始める…。
監督・脚本：園子温
出演：椎名桔平、満島真之介、日南響子、鎌滝えり、YOUNG DAIS、長谷川大 ／ 真飛聖、でんでん
2019年10月11日（金）よりNetflixにて全世界配信
公式サイト：https://www.netflix.com/theforestoflove
