- 古川:
-
エースの最期も鼻水たらしてたなあ(笑)。
- 平野:
-
『うる星やつら』でもありましたが、そういう力の入った名演技が、その後の脚本や映像にフィードバックされていくってこともありませんか? そして、それを見た役者がさらに良い演技をしていくっていう。
- 古川:
-
それぞれの職種の人が勝負を賭けてくるって感じはあるよね。
- 田中:
-
そうですね。そして、それを許すのが、原作・尾田栄一郎のすごいところ。作品によっては、原作者が口出しをし過ぎて、アニメ制作陣の手が縮こまっちゃうってことがあるんですよ。でも、尾田っちはそこで一切口出しをしない。それどころか、「アニメはすごいなぁ、色がついて、絵が動いて、音も入って、声が入って、ずるいよ……僕は平面で勝負するしかないのに」なんて、アニメに対して、最大限の敬意を払うんです。そうすると、やっぱりアニメの作り手も、この作品を大事にしようって気持ちになるんじゃないかな。すごく、“魂がのってる”感じがしています。
- 平野:
-
義務でもなく、使命でもなく、自然にそう思わせるというのは素晴らしいですね。そして、そういう作品でないと、20年近くも愛されるアニメにはならないのかも。……どうです? そういう作品でトップ(主人公)を演じるというのは。何か心がけていることってありますか?
- 田中:
-
『ONE PIECE』の主要キャラクターには、それぞれ船の上での役割が割り振られていて、たとえば、ナミ役の岡村明美ちゃんは、一番若いんだけど、航海士=お母さん的な位置付けなんです。なので、私もルフィ役を演じる時には、自然と船長的な立ち位置になります。
- 古川:
-
(劇団の)「座長」って感じがするよね。
- 平野:
-
『ドラゴンボール』とか、いろいろな作品で共演している登志夫さんから見ても、『ONE PIECE』の時の真弓さんは、ほかの作品の時とは違っているの?
- 古川:
-
『ドラゴンボール』にはマコさん(編集部注:孫悟空役・野沢雅子さんの愛称)がいるからね。作品によって、適切な距離感を自然に取れるところも、真弓ちゃんのちゃんとしているところだと思うな。
- 田中:
-
初めて言われましたよ、そんなの(笑)。ただ、『ONE PIECE』でルフィをやるようになってから、『ドラゴンボール』で悟空を演じているマコさんの気持ち、すごさが分かったてことはありました。自分を(主人公を)持ち上げてもらうのって大変なんですよね。
最も田中真弓らしい役は? 最も田中真弓らしさを消した役は?
- 平野:
-
真弓さんは本当にいろいろな人気作品に出演しているので、どれから聞いていいのか困ってしまうのだけど、それらの中でも特に『おそ松くん』(1988年)チビ太の役がすごく気に入っているんですってね。
- 田中:
-
チビ太は自分だったなって思います。
- 平野:
-
どの辺が?
- 田中:
-
まず、少なくともチビであるところが(笑)。そして、赤塚不二夫先生の漫画って、毎回シチュエーションからがらりと変わってしまうんだけど、それが楽しかった。チビ太が社長だったり、貧乏な家の子供だったり、ギャングだったり……。
- 平野:
-
おそ松くんの6兄弟が、正統派のギャグキャラクターだったから、チビ太やイヤミのような脇を固めるキャラクターが型破りになっていくのかしらね。そして、チビ太というとずいぶんアドリブを入れたそうで……。