Jun 29, 2017 interview

中村義洋監督がアクション時代劇『忍びの国』に込めた熱い想いとは?

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読書好きな監督が読む度に涙する小説とは?

 

──中村監督はこれまでいろんな原作ものを映画化してきましたが、面白い原作小説に出逢う秘訣はあるんでしょうか?

自分で本屋で手にとってみる、ネット書店で買う、知り合いに面白い本を薦められる、プロデューサーから頼まれるなど、ケースはいろいろです。面白い本に出逢うための秘訣というのは特にはありません。いい本に出逢ったときは、それこそ祈るような気持ちで最後まで読みます。

──中村監督自身が「面白い!」と思える原作であることが、映画化の第一条件なんでしょうか?

面白いかどうかというよりも、作家の言いたいことがきちんと書かれていて、そのテーマに丸々共感できるかということですね。その点、今回の『忍びの国』は和田さんの言いたいことがはっきりしていて、最後までブレがなかった。『殿、利息でござる』『忍びの国』と自分にとって勝負作と呼べる作品が続いたことで、原作ものを映画化するハードルを自分でかなり上げてしまっているなと感じています(笑)。

 

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──では最後の質問です。中村監督の愛読書を教えてください。

いっぱいありますが、毎年必ず読み返すのは志賀直哉の『小僧の神様』です。10代のときに出逢って、1年に一度は読み返し、毎回泣いてしまいます(笑)。あと、楽しみなのは宮本輝さんの『流転の海』シリーズ。宮本さんの自伝的大河小説で現在第8部まで刊行されているんですが、おそらく残り1巻で完結しそうです。どんなフィナーレを迎えるのか、楽しみで仕方ないんです。

 

取材・文/長野辰次
撮影/吉井明

 

プロフィール

 

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中村義洋(なかむら・よしひろ)

1970年8月25日生まれ、茨城県出身。大学在学中にぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞。崔洋一監督、伊丹十三監督らの助監督を経て、『ローカルニュース』(1999年)で劇場映画デビュー。2007年の『アヒルと鴨のコインロッカー』の大ヒットで一躍注目される。他『チーム・バチスタの栄光』(2008年)、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(2009年)、『ゴールデンスランバー』(2010年)、『映画 怪物くん』(2011年)、『奇跡のリンゴ』(2013年)、『予告犯』(2015年)、『殿、利息でござる!』(2016年)などコンスタントに作品を発表している。

 

映画レビュー

 

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嵐のリーダー・大野智が主演した新感覚の時代劇エンターテイメント。原作者の和田竜が『のぼうの城』(12年)と同様に脚本も手掛けており、ストーリーはほぼ原作と同じ。見どころとなるのは、何といっても忍者たちの活躍ぶり。下忍たちが城を築き上げ、森を駆けていくシーンはCGではなく、専門のパルクーラーたちを集めて、忍者たちの驚異的な身体能力を現代に再現してみせている。そしてクライマックスを飾るのは、「伊賀最強忍者」を自認する無門(大野智)と武士道を心得る元忍者の平兵衛(鈴木亮平)との息詰まるソードアクション。中盤までのユーモラスさが漂う展開から、いっきにシリアスモードへ突入してく。これまでになかった殺陣シーンだけでも一見の価値あり。

映画『忍びの国』

原作・脚本:和田竜 
監督:中村義洋
ナレーション:山﨑努
出演:大野智 石原さとみ 鈴木亮平 知念侑李 マキタスポーツ 平祐奈 満島真之介 でんでん きたろう 立川談春 國村隼 伊勢谷友介 
配給:東宝 
2017年7月1日(土)より全国ロードショー
(c)2017「忍びの国」製作委員会
公式サイト:http://www.shinobinokuni.jp/

 

 

 

原作紹介

 

『忍びの国』和田竜/新潮文庫

処女小説『のぼうの城』がベストセラーとなった和田竜が描く実在の合戦を題材にした時代小説第2弾。織田信長の次男・織田信雄と伊賀国の忍者衆が戦った「天正伊賀の乱」を伊賀国の下忍・無門の視点から捉えたものとなっている。これまでの時代小説に登場する忍者はクールな性格であることが多かったが、『忍びの国』の忍者たちは逃げる際に撒く鉄びしをケチろうとしたり、縄抜けする際に骨を外すのを痛がってみせたりと、人間味たっぷり。時代小説に興味がなかった人でも気軽に読めるはずだ。

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中村監督のおススメ本

 

『小僧の神様』志賀直哉/岩波文庫

1920年に志賀直哉が雑誌「白樺」に発表した短編小説。いつか寿司屋でお腹いっぱい寿司を食べてみたいと願っていた、秤屋に奉公する丁稚の仙吉が体験する不思議な出来事を描いたもの。仙吉の視点から見ると超常現象のような体験だが、小説の結末にはとても人間くさいエピソードが用意されている。もしかしたら、神様は身近なところにいて、マジメに働いている人間をちゃんと見守ってくれているのかも……と温かい気持ちになれる一編だ。『小僧の神様』が人気を呼び、志賀直哉は“小説の神様”と呼ばれるようになった。

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