Jun 29, 2017 interview

中村義洋監督がアクション時代劇『忍びの国』に込めた熱い想いとは?

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映像化は困難と言われていた小説や漫画を、その作品の持つエッセンスを損なうことなく映画化してみせることで人気の中村義洋監督。伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨のコインロッカー』(07年)、湊かなえ原作の『白ゆき姫殺人事件』(14年)などを手掛け、原作者からの信頼も厚い。和田竜原作、大野智主演作『忍びの国』は、中村監督にとっては待望の忍者もの。従来の映画やテレビドラマでは描かれることのなかった、リアルかつユニークな忍者vs侍の戦いが繰り広げられる。中村監督の原作小説に対する深い愛情と映画化する上での強いこだわりを感じさせるインタビューとなった。

 

──小説『忍びの国』が出版されたのは2008年。『のぼうの城』(12年)が劇場公開される前でしたが、出版されてすぐに中村監督は読まれたそうですね。

2008年中に原作者の和田さんにお会いして、映画化の許可をいただいているので、本が出てすぐだったと思います。『のぼうの城』が映画化されることは知っていましたが、僕は断然『忍びの国』でした。忍者ものが好きだということもあり、また和田さんが描く忍者の在り方に惹かれたんです。忍者が使う「土遁の術」はこれまでの映画やテレビドラマだと落ち葉が敷き詰めてあるところから忍者がバッと飛び出すみたいな描写ですが、和田さんの小説だと土の中に潜んでいる忍者が息をするために細い筒が土の上に出ているわけです。敵が筒を目印に槍を突き刺すと、忍者は簡単にヤラれてしまう。忍術って、そんなもんだよねという(笑)。子どもの頃に学研の「ひみつシリーズ」というのがあって、その中の『忍術・手品のひみつ』をすり減るくらい読んでました。

 

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──忍術と手品が同列扱い!

そうそう(笑)。忍術って、結局は手品と同じなんです。今回、シナリオハンティングのために伊賀の忍者屋敷に行ったのですが、くのいちの格好をしたガイドさんが実演してくれて、目くらましをボンッと爆発させ、「この隙に逃げます」と。隠し扉とかも扉の仕掛けがすごいわけじゃなくて、扉に逃げる瞬間に相手の目をそらすわけです。忍術の極意は手品と同じなんですよ。「火遁の術」「水遁の術」ってありますけど、「遁」って逃げるって意味ですしね。忍者は逃げることのプロ集団だったんです。そのことを和田さんはきちんと書いている。それと和田さんのうまいところは、歴史ものは史実として残っていない部分をどう描いてもかまわないということ。「天正伊賀の乱」は織田信長の命令を破って織田信雄が伊賀を大軍で攻め込んだけど大敗しましたというだけのお話なんですが、伊賀側が実は戦いを誘ったのかもしれないと解釈してみせたわけです。和田さんは解釈の仕方が実にうまい。

 

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──忍者に関して、改めてリサーチはされたんでしょうか?

以前から興味があって、忍術伝書『万川集海』という分厚い本を読んでいたので、今回のために特にリサーチし直すことはなかったですね。『万川集海』は助監督にも読ませましたし、読めば読むほど学研の「ひみつシリーズ」と変わらないなと思いました(笑)。僕の監督デビュー作『ローカルニュース』(99年)でも、地方局の取材クルーが訪ねる先が忍者村で、中盤は延々と忍者村で起きる珍事件を追いかけています。忍者をバカにしているわけではなく、忍者のことを愛するがゆえです(笑)。