Apr 27, 2017 interview

三池崇史監督はなぜ無茶な映画ばかり撮り続けるのか?『無限の住人』に見る“崖っぷちの美学”

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映画監督が戦うべき相手とは?

 

──三池監督と木村拓哉が初タッグを組んだことで『無限の住人』は大きな反響を呼んでいるわけですが、改めてキャスティングの経緯を教えていただけますか?

まぁ、作品が引き合わせてくれたということですね。『無限の住人』の映画化はどうなんだという話が出たときに、なぜか木村拓哉以外ではありえないと思ったんです。その後、グループの解散もあって、『無限の住人』の万次とますます彼は同化していった。もちろん、以前から彼には興味を持っていたんだけど、彼を映画に引き出す口実というか武器がなかった。そんなとき『無限の住人』の万次という死にたくても死ねないキャラクターに出逢い、これはオファーする価値があるなと思い、初めて声を掛けたんです。映画俳優ならダメもとでもオファーできるけど、彼は映画俳優としてだけで生きている人ではない。それで今までは声を掛けられなかった。この役をわざわざ木村拓哉でやる必要はないよねと。でも『無限の住人』の映画化の話が持ち上がったときは、すぐに(万次=木村拓哉と)結びついたんです。彼といつか仕事をすることになるなという予感はしていたので、違和感はなかったですね。いよいよだな。木村拓哉というスーパースター、スーパーアイドルはどんな色をしていて、どんな匂いの中にいるんだろうという興味があったんです(笑)。

 

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──バイオレンスシーンに関して、キャスト側と詰めていくようなやりとりはあったんでしょうか?

いや、誰かが困るようだったら、それを無理矢理やらせることはしないので、そういうのを気にする人は、最初からキャスティングしないということです。役者を説得したり、プロデューサーと揉めたりする映画はやりたくないんです。闘うべき相手は映像の中にあるわけです。自分自身と日々闘っている人に、それ以上のことをやれという声が掛かれば、それは違うと言いますよ。でも自分も他人に何か言う前にツッコミどころがあって、怠け者なんで体も頭も20%くらいしか普段は動いていないんです。それが映画の現場においてのみ70%くらいまで上がって、本番が迫ると崖っぷちに立たされたような感覚で一生懸命になれる。そんな普段は怠け者な人間だけが思いつく何かがあるかもしれない。それを映像にしていきたいんです。

 

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