Apr 27, 2017 interview

三池崇史監督はなぜ無茶な映画ばかり撮り続けるのか?『無限の住人』に見る“崖っぷちの美学”

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人気コミックの映画化を託された者の矜持

 

──『クローズZERO』(07年)、『愛と誠』(12年)、『テラフォーマーズ』など映像化が難しいと言われたコミック原作の実写化も手掛けてきましたが、今回の『無限の住人』はどうでしたか?

原作者の沙村広明さんはまともじゃないですよね(笑)。19年間にわたって『無限の住人』を描き続けてきたわけでしょ。原作コミックは30巻まである。多分、これまでも映画化の話はあったと思うんです。なぜ今までダメだったのかは分かりませんが、それを今回は一気にケツまで映画化しちゃえと。普通のコミックは映画にするのは3巻分ぐらいしか描けないんです。でも今回は棄てるところは棄てて、生かすとことは生かした。万次(木村拓哉)と凜(杉咲花)の出逢い、そして凜によって万次が生きる目的を手に入れて再生し、後は天津(福士蒼汰)との決着。ここだけに絞っていきましょうと。でも19年間かけて30巻まで描いた自分の作品を1本の映画にされてしまうのは、原作者としてどんな気持ちなのかは気になりますよね。我々よりかは遥かにデリケートでしょうから。沙村さん専用の試写もやりました。

 

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──原作者である沙村さん限定の試写会ですか。

そうです。みんな一緒の試写だと、どうしても大人の対応をしてしまい「良かったですよ」と噓をつかなくてはいけないかもしれない。それで専用の試写を開いたんですが、どんな反応だったかスタッフに聞いたたら、「沙村さん、すごく喜んでいたよ」と。原作者が思っていたような作品に全然なっていないものには、やっぱりしちゃいけないと思っています。そのためにはどうすればいいかは分からないですよ。答えはありませんから。でも、そういう想いだということは、スタッフ全員にも役者にも染み込んでいく作品になるようにしています。完成した作品がいくらヒットしても、原作者に「違う」と思わせるわけにはいかない。どの作品でも、そういう想いだけはいつも持っているんです。

 

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