新人二人×実力派起用による相乗効果
――今回、キャスティングが一風変わっていますよね。
池松 すごく面白いですよね。
――高校生役の岩田さんや高畑さん、前田さん、太賀さんの年齢だけで考えると、池松さんが高校生役でも良かったわけですもんね。新人の二人を真ん中に据えて、周りを実力派で固めるという感じだったのでしょうか。
石井 順序立てて説明すると、あるタイミングで主演はまるっきりの新人にしようと決めたんです。それはなぜかというと、この作品は“わからない”ということがテーマだから。町田くんは人に恋をするということがわからない。その“わからない”を本物のわからなさでやりたかったんです。町田くんを演じる細田佳央太くんは映画に関しては右も左もわからない新人なので、本物の生々しい混乱を撮れると思いました。で、町田くんよりは“恋すること”について少しわかっている存在だけど、それでもわかんないっていうところの猪原というヒロインに、当時20歳の関水渚さんを起用して。彼ら二人――特に町田くんという圧倒的に無垢なる存在を浮き上がらせるために、世界を知りすぎた大人――実力や経験を持った人たちで周囲を固めようと思いました。彼らは年齢的に高校生役をやっていいのかと不安だったと思いますし、居心地が悪かったであろうけど、それも狙いです。そして無垢なる町田くんに直面した時に、世界を知りすぎた彼ら実力派俳優たちが驚き困惑し、新しい魅力が引き出されるのではないかという期待もありました。
――新人の二人にも実力派の彼らにもお互い相乗効果をもたらすという。
石井 そうですね。そういえば僕は以前、「おかしの家」(15年/TBS系)というドラマをやったことがあるんですけど、オダギリジョーさんと勝地涼くんが同い年の親友という設定にしたんですよ。その時も二人の実年齢が10歳も違うとかいろいろぶつぶつ言われたんです(笑)。たまにそういうことをやるみたいで。要するに目に見えている表面的なものは実はそれほど重要ではないですよね、ということなんですが。つまり、挑発のようなことをたまにやりたくなるんですよね。
――なるほど。
石井 今回の映画でやりたかったことは20代中盤の人たちが制服を着て面白いねというコスプレ披露会ではもちろんなくて、目に見えないもの、人間にとって本当に大切な感情を描きたいと思っていましたから。そういうことも全部ひっくるめてこういうキャスティングが相応しいと思いました。